自社開発のシステムで頭角現す
三島食品 関東工場(3)

 三島食品の関東工場は自社開発した生産管理システムを使い、仕事のやりやすい環境を自分たちの手でつかんだ。「現場から挙がった改善点をいつでもカスタマイズできる」と同社ではこのシステムを重宝。生産ラインには改良した設備が随所に見られる。

衡(はかり)とレシピ、生産
管理システムは連動している

 広島市にある同社の研究所では製品の最新の設計図(レシピ)が毎日更新される。原料のサイズや包装の印字内容の変更点などレシピに記載された情報を基にラインスタッフは生産に携わる。
 調味粉末計量室では、このレシピのことを“カルテ”と呼んで、特に気を引き締めている。計量は味の決め手であり、調合の微妙な差により味を大きく変化させかねない。「レシピには注意書きを細かく記載しています。過去にあった誤りなどを蓄積して次に活かす、まさに“カルテ”そのもの。最新のレシピは過去の症状を洗い出しているのです」と小彼工場長は説明する。
 計量作業は同社が独自に開発した生産管理システムと連動させて精度を高めている。今でこそ生産管理システムは、システムエンジニア会社が食品メーカー向けにソフトを開発し、導入が進んでいるが、同社は早い段階から取り込んでいた。しかも、独自にシステムを開発した。「現場から挙がってきた改善点をいつでもカスタマイズできます。しかも安い。購入するのと比較すれば、1ケタは違うのでは」(小彼工場長)と笑みを浮かべる。
 レシピと、それに連動させる生産管理システムは加工、充填、包装、搬送、出庫とすべての工程に網羅している。実はこの一連のシステムは末貞操常務が生産部門の担当者だった頃に開発し、基礎を築いたものだった。今では若手も参加し、その意志を受け継いでよりよいシステムの構築に力を注いでいる。

梱包、搬出工程でも

あらゆる工程で毎日変化するレシピを参照
(写真は原料=野菜=の切断)

加熱釜に設置した水の自動投入機

 システムもそうだが、生産設備の改善もスタッフの手で都度更新している。
 レトルト食品は煮たりせず、生の原料のまま袋に入れる。しかし、一部ではあるが、事前に昆布をボイルしたり、おいしさを引き立てるため肉に熱を加えてからレトルト処理するアイテムもある。その際、3台ある加熱釜で調理するが、以前はホースを手に持ち、釜に水を注いでいたため、効率的にも良くなかったという。そこで、水自動投入機を自家製で開発して設置し、大幅に作業効率を改善させた。
 エアシャワー室には、風だけでなく、イオンを出して静電気を除去させる“静電気除去装置”も編み出した。

冷凍庫内も万が一に備え、手動で開けられ
るように改良

エアシャワー室に設置した静電気除去装置

 冷凍庫には、万が一に備え、手動で扉を開けて脱出できるように改良した。「電気が止まれば、重たい扉はまったく動きません。“自分たちの安全は自分たちの手で確保する”という危機意識の現れです」(小彼工場長)。

スライサーに手が巻き込まれないよう
安全スイッチを取り付けた。これも
自分たちを守る手立ての1つ

大小様々なスライサーが稼働している