ホップ由来ビール苦味成分は認知機能を改善する

 キリンの健康技術研究所はホップ由来のビール苦味成分のイソα酸がアルツハイマー病発症時の海馬の活動を改善し、低下した認知機能を改善すると世界で初めて解明した。東京大学、学習院大学と共同研究した。
 認知機能が低下したアルツハイマー病モデルマウスにイソα酸を7日間経口投与した後、マンガンMRI測定を行い、新規空間探索時の脳内の神経活動を評価した。またアルツハイマー病の原因物質とされるβアミロイドの量、海馬のサイトカインなどの炎症物質を測定し、行動薬理学的に認知機能を評価した。
 その結果、健常群と比較してアルツハイマー病発症群では海馬の活動異常がMRIで確認され、イソα酸投与群ではその活動異常が改善し、特に海馬CA1領域で確認された。
 可溶性のβアミロイドの量が低下し、海馬での脳内炎症が緩和した。行動薬理評価の結果、認知機能が有意に改善した。イソα酸は短期的な投与で脳内炎症を抑制し、海馬の活動を改善することで認知機能を改善するとみられる。

 高齢者の増加に伴い、認知症や認知機能の低下は、日本だけでなく世界的に大きな社会課題となっている。特に高齢化の進む日本国内では、2025年には認知症患者が700万人を超えるとされている。
 アルツハイマー病に代表される認知症には十分な治療方法がなく、食事や運動など、日々の生活を通じた予防手段が注目されている。疫学などの研究では、適度な量の酒類の摂取は認知症の防御因子となるとの報告があり、同社でも、これまで東京大学と共同でビールの苦味成分であるイソα酸のアルツハイマー病予防効果に関する研究に取り組んできた。   
 研究成果は11月24日〜26日に開催された「第36回日本認知症学会学術集会」で発表した。