谷口会長
前年を振り返ると、新型コロナウイルス感染症は新しい株に置き換わり、感染者数は増大したものの重症者数が抑えられたこともあり、行動制限が緩和され経済活動が回復に向かった。一方で、世界的な部品供給のひっ迫は続いており、ウクライナ情勢によるエネルギー価格、素材価格の高騰は日本経済、そして業務用厨房の業界にも大きな影響を及ぼしている。この2年半の間はオンラインを活用して理事会や委員会などの活動を継続してきたが、昨年5月には約3年ぶりに理事会が対面で開催されるなど以前の活動に復しつつある。
当工業会が扱う業務用の厨房は、料理する人、食材と共に人々に欠くことのできない“食”を支える場所であり、ハードとして人・モノ・エネルギーの流れが集中するだけでなく、ソフトとして食文化の発展を担う発信の拠点でもある、重要な場所である。業務用厨房業界のユーザーやお客さまの信頼を得、厨房を作り支えている厨房業界の発展、事業課題の解決に寄与するため、厨房設備士の資格認定制度の運営、厨房設備機器展の開催、月刊厨房の刊行、JFEA業務用厨房機器基準と登録制度の推進の事業を中心に取り組んできた。HACCPをはじめとした食の安全の講習、政府が2050年達成を宣言したカーボンニュートラルへ対応する見学会の開催、生産年齢人口の減少で顕在化している人材不足にも対応するホームページのリニューアルなどを行った。
特にスチームコンベクションオーブンにおけるグリス除去装置との離隔距離については、安全を確保しつつユーザーの機器設置を容易にするため、実験および協議を総務省消防庁・東京消防庁・当工業会間で行い、昨年10月3日に総務省消防庁より離隔距離緩和に関する通知が行われたことは特筆すべき出来事である。
今年も主要事業ほかを推進し、HACCPや省力化・非接触化につながるIoT技術に関する情報提供を行う。また環境保全としてこれまでもより効率の良い厨房機器への更新を図ることにより、お客さまの省エネ・CO2排出量削減に寄与してきたが、より理解を深め、人材の育成、機器の開発と更新を促進し、カーボンニュートラル社会の実現に貢献していく。