“工場まるごとハバジット”掲げ
ハバジット日本 代表取締役社長 瀧波 厚子氏
スイスで生まれたハバジット樹脂ベルトは世界各国、様々な産業で使用されている。特に成長著しいのが食品工場用の搬送ベルト。新商品を次々と発表し、日本でも導入が進んでいる。「食品工場の入口から出口までをハバジットのベルトでカバーしたい」。目標はどこまでも尽きない。
――スイスに本社があり、世界各地にはグループ会社がある。
瀧波 もともとは繊維や製紙業界向けのベルトからスタートしたのですが、近年は食品業界向けの搬送ベルトの割合が増えています。食品向けのシェアを上げていくのが当社の命題であり、食品業界向け販促に特化しているスタッフもいます。今年春、クリーンドライブシリーズに「両面フラットタイプ」の２品種を追加しましたが、こちらも食品業界をターゲットにしています。
新製品「両面フラットタイプ」
新製品の「両面フラットタイプ」は２mmと３mm厚の２種類。ベルト搬送面と裏面は均質で開口部がないため、食品の残渣や汚れが落としやすく、細菌の繁殖リスクを大幅に削減する。また耐湿熱タイプの熱可塑性ポリウレタンとアラミド心線を一体成型しているため、水洗浄するラインでも水分や油の浸透による繊布の膨潤や化学品の影響による層間剥離がない。
従来品はベルト全幅に一体成型された駆動歯とスプロケットによるポジティブドライブ方式のみだったが、今回の両面フラットタイプの導入によって、食品製造現場で幅広く使用されている樹脂ベルトから、比較的容易にベルト交換が可能だという。
15�亟岾屬妊▲薀潺豹汗�と一体成型してあり、これにより負荷を受けた時のクリープや伸び、熱水洗浄時の熱膨張の問題を抑えることで、耐久性が飛躍的に向上した。またベルトのエッジ部も完全にシールされており、樹脂ベルトのようなエッジ部からの糸ほつれの心配がない。専用ツールの利用でベルトの溶着がすばやくでき、平滑でなめらかに仕上がる。
クリーンドライブシリーズは、食品工場の“洗浄性”をテーマにハバジットが開発したベルト。2011年７月の導入以降、水や油を多く利用し、過酷な高頻度洗浄を必要とするようなウェット環境への導入が急速に進んでいる。
瀧波社長
――食品業界のユーザーの動きは。
瀧波 当社が扱うベルトは食品業界の中でも、特に製パン業界で多く使用されています。ただ今年は原材料の高騰などもあり、設備投資のお話は少なめです。
一方で積極的に海外に進出しているメーカーもあります。当社がお付き合いしているメーカーも、このほどインドネシアに工場を新設したのですが、私たちは現地のハバジットと情報を共有し、その土地での要求に合致する製品を提案しました。ハバジットグループは直接の子会社が世界に36社あります。このネットワークを活かせば、進出先でも日本と同じようなサービスを提供できるのが、グループの強みでもあります。
――国内でも投資の再開に期待したいところ。
瀧波 日本には潜在性があります。と言うのも、製パン工場で多く使われているスパイラルも、日本の工場では金属製を使用しているところが非常に多いのです。国内で何千台というスパイラルが稼働していますが、当社が扱うようなプラスチックベルトはまだまだです。金属製からプラスチック製に切り替えられるよう提案をしていくのが当面の課題。市場はすぐ近くに眠っています。
“標準化”で納期が早く、わかりやすい
――繊維や製紙業界向けから始まったが、食品向けも着実に増えている。その要因は。
瀧波 国内に工場はありませんが、納期はどこよりも早くを心がけています。サービス面で優位に立たないと、ユーザーの期待を裏切ることになります。
――納期を早くする手段は。
瀧波 “標準品プラスα”という概念を持って提案しています。スイス本社が作るベルト（＝標準品）があり、そこから例えば“ウェットな製品向け”など各条件に沿って、必要に応じた２次加工を施して日本のユーザーに提供することができます。 “セミカスタマイズ”と言ってもいいのでしょうか。
“標準品”ということでは納期を早めることに成功してきました。ユーザーそれぞれのご希望仕様に合わせることからスタートすると製品仕様が細分化してしまい、生産効率が下がり、コストアップになってしまいます。当社では世界レベルでなるべく仕様を共通化する努力により、仕様の細分化を極力抑えています。それにより、無駄な手間や教育期間を省き、コストダウンに繋がり、ユーザーに安く、よりよい製品を提供することができます。エンドレス加工の精度も自慢の一つです。
――今後の展望は。
瀧波 2011年は過去最高の販売実績となり、2012年もそれを維持しました。震災後も時短営業をせず、ユーザーに何かあった際にすぐに応じられるよう窓口を常に開けている体制を整えました。地道にやってきた結果、既存のユーザーからの信頼も増しましたし、新規のユーザーと繋がることになりました。この姿勢は今後も続けていきたいと思います。
ここ何年かは“工場まるごとハバジット”をスローガンに、当社のスタッフはユーザーに働きかけています。生産ラインの入口から出口までをハバジット製品でカバーする、これこそが仕事の醍醐味です。例えば豆腐の製造ラインでは、当社の平ベルト、タイミングベルト、プラスチックベルトを組み合わせた、他にはないシステムを完成させ、複数のメーカーで実績を積んでいます。今後もいろいろと仕掛けていきますので、ぜひ期待していただければと思います。