スキンパック普及、まずは消費者から
化学大手が東京代官山でイベント開催

 樹脂製品メーカー大手の住友ベークライトは日本で初めて開発したハイバリアのスキンパックフィルム「おいしさスキン」の機能性や特長を一般消費者にアピールするイベントをこのほど開催した。東京代官山に開いたポップアップストアには3日間で約200名が訪れた。

 スキンパックの商品を初めて見たという人が多く、「ピタッと密着していて食品サンプルかと思った」という驚きの声や、「お肉を買う時でもドリップを気にする必要がない」、「プラスチックを削減できる」といった評価の声があがった。

    代官山に期間限定でオープンした「おいしさスキン」のポップアップストア

 フィルム・シート営業本部P-プラス・食品包装営業部の弓戸裕樹営業部長は「今回のイベントはスキンパックの普及活動が目的。食品メーカーや量販店などに提案しているが、先駆けて導入しようという動きは鈍い。そこで消費者への啓もう活動から始めた」と語る。

 同社はスキンパックのニーズをつくり出すことが先決とし、今回のイベントに先行して一般消費者向けのセミナーや量販店での試食販売会などを行ってきた。

 スキンパックは台紙やトレーの上に食品を載せ、その上から加熱したフィルムを被せて溶着する際に真空引きする包装方法。台紙を使った場合、従来のトレー包装に比べてプラスチック使用量を20%減らすことができる。食品ロス削減効果が高いことと併せて、欧州では優れた食品包装技術として主流になっている。

牛肉は賞味期限を2週間延長

 住友ベークライトが2020年に開発した「おいしさスキン」は酸素バリア性を持ち、酸化や腐敗を防いで消費期限の延長を実現する。たとえば、牛肉はトレー包装やラップ包装に比べて2週間延ばすことができる。通常のトレー包装や真空パックで発生しやすいドリップも抑制する。

 食品のロングライフ化は食品ロス削減だけでなく、日々の出荷時間に追われる製造現場では工場の稼働時間を柔軟に調整でき、深夜勤務をなくすなど働き方改革にもつながる。

 ロングライフ化の効果はほかにもある。スキンパックで保存中に熟成が進むことがわかり、第三者機関の食味試験ではうま味、柔らかさを含めた総合評価が高いことを確認した。弓戸部長は「和牛の輸出拡大に大きく貢献できる可能性がある」と期待する。

店舗では「和牛うらい」(兵庫県加古川市)の熟成肉、「燻製BALPAL」(大阪市)のアン
ティパスト(前菜)、「マルケー食品」(広島県福山市)のパエリアをマルシェ限定のスキ
ンフィルムパッケージで包装して販売した

 スキンパックはすき間なくフィルムを密着させるが、食品の形を崩さず、シワがつかないことが大前提。「おいしさスキン」はこの追従性の高さも売りにしている。コアになるのが同社独自の「架橋」というフィルム加工技術(特許取得済み)。

 熱や光のエネルギーをフィルムに当てることで、フィルムの分子配列を単列から網目構造に変えることができる。これによってゴムのような特性が生まれ、密着性が増す。耐ピンホール性も高まる。

精肉だけじゃない、水産品でも研究開始

 量販店では人手不足を背景にプロセスセンターの新設やアウトパック化、産地パック化が進んでいる。インストア加工に比べて商品を棚に並べるリードタイムが長くなるため、鮮度保持のニーズは一層高まるとみられる。同社はスキンパックがその切り札になるとして、提案を強化していく考え。

 弓戸部長は「水産品をスキンパックして賞味期限を延長する研究にも着手した」と語る。スキンパックは先行する欧州でも精肉がメインで、水産品はサーモンなどの味付け商品が一部見られる程度。日本は刺身や干物、蒸し焼きなど調理技術が高く、スキンパックでロングライフ化できれば水産加工品の輸出拡大につながる。

「おいしさスキン」で包装した牛肉。新鮮な牛肉は本来、赤黒い色をしている。一般客から
は「本当に新鮮な肉は赤いわけでなく、酸化したから赤くなることを初めて知った」との感
想が聞かれた