日本食品機械工業会の2013年の事業活動を「活発だった」と振り返る。会長1年。食品機械メーカーの立ち位置と方向性は――。新年に当たり新たなリーダー、林孝司会長に存分に語ってもらった。
林会長
――日食工の1年の活動を振り返って。
林 大変活発で充実した1年でした。会員企業の日頃の成果を披露する展示会「FOOMA JAPAN」は日食工の活動の中でも最大のイベント。昨年も最新の機械や技術が集結し、来場者にも満足していただけたと思います。会期は4日間。しかし、この4日間を成功させるため、出展社はたくさんの時間をかけてアイデアを練り、試行錯誤を繰り返したことでしょう。主催者の1人として、感謝申し上げます。
――会場は連日賑わっていたが。
林 麺や飲料、乳製品、醸造、製菓製パン・・・。一口に食品機械と言っても業種は様々。私たち工業会は多岐に渡って扱っているのが特徴です。来場者はお目当ての機械以外にも、周囲に展示している最新の機械や技術を目の当たりにして、刺激を受けたことと思います。こうした刺激が熱気となり、展示会の盛り上がりにつながったのだと感じています。
――2014年度開催の出展申し込みも順調で、早々に満小間となった。
林 例年以上に早いスピードでした。展示会に対する期待の表れでしょう。来場者はもちろん、出展社にも“参加して良かった”と思ってもらえるよう、私たちも今から気を引き締めています。ぜひ期待してください。
――昨年5月末に会長となった。
林 アベノミクス効果で景気が良くなると言われているものの、中小企業が多い食品機械メーカーには、その影響がまだ及んでいないのが現状。国内では今後も人口が減り、世界2位と言われたGDPも下がり、アジアの中の日本の立場も変わりつつあります。この変化に耐えうる業界の新しい対応策を、会員各社とともに考えていかなければなりません。
――会長になっての気づきは。
林 日食工の業種が多岐に渡っているのは強みだと言いましたが、注意も必要です。例えば飲料業界が好調でも、醸造業界は不調ということもあり、それらを一括り(ひとくくり)にして“これはこうだ”と言い切るわけにはいきません。
私の会社では製パン製菓用のミキサーを扱っており、副会長時代には製パン製菓業界の現状を会合などで訴えることができましたが、会長職はそういうわけにはいきません。常に食品業界、食品機械業界全体を意識し、行動し、業界が良くなるように、会員各社とともに考える機会を創出していかなければなりません。そう考えると、私たち工業会は幅広い業種で構成されているのだと、改めて強く感じました。今後は業種ごとの現状と課題点をより鮮明にし、それぞれの部会活動をより活発にして、全体で集まる際には、部会などで出た意見を出し合う環境を整えていきます。
――会長として、2014年の仕事は?
林 企業の設備投資の動向が注目されます。どこまで私たち食品機械の中小企業が恩恵を受けられるかを見きわめる必要があります。またTPPも本格的に始まり、世界が広がります。海外のマーケットをどう取りに行くかも考えなければなりません。ユーザーである食品メーカーが海外に進出するからそれに付いていく――そういう姿勢ではなく、機械業界もともに歩み、積極的に動いていく姿勢が問われています。
フランスを訪問する外国人は年間8000万人、中国は年間4〜5000万人。それに比べて来日する外国人は800万人と出遅れています。しかし政府が観光立国を謳い、和食も無形文化財に登録されたのを機に、より多くの観光客が訪れるようになると思います。それにどう対応するか。
イスラム圏の人たちにはハラルに対応した食事が必要になりますが、あちらの国指定の食品を輸入し提供する、といった対応では何も生み出しません。ハラルに対応した日本料理を創出する努力が、食品メーカーはもちろん、私たち食品機械メーカーにも迫られています。設備を扱う私たちは時代の変化をつかんで、一歩先を進まなければなりません。食品メーカーが(ハラルに対応するような)新しい食品を作りたいと思った時に、それに叶う食品機械を提供できないと、海外製の機械を求められてしまうでしょう。
――今後の展望は。
林 この1カ月で賛助会員を含めて9社が入会するなど、工業会は成長を続けています。会員同士で技術を研鑚し、あるいは助け合いながら、より良い機械を提供していきます。
また、今まで以上にユーザーの動向を注視します。食品工場の設備投資はもちろん、無視できないのが“地場”の勢力。その好例が道の駅です。パンや菓子、飲料、野菜加工・・・。あのスペースには様々な業種の食品加工が詰まっています。まさに道の駅は“食のステーション”。米粉用の製粉機や、それをパンに加工するミキサー、地産の野菜や果物を飲料にする搾汁機など、私たちの扱う機械と充分に重なり合っています。
大手メーカーが建設する食品工場のような大々的なものではありませんが、日本全国、各地にあるこうした活動は非常に活発です。いま最も元気のある形態の1つである道の駅や地場の投資活動から目を離すわけにはいきません。