“村営”が足かせに、行政主導で加工場つくれ
キースタッフ 代表取締役 鳥巣 研二氏(復興水産販路回復アドバイザー)

 東日本大震災の被災地の水産加工業を復興させるため水産庁から6月、「復興水産販路回復アドバイザー」に任命された。商材となる“原石”の発掘や新しい取り組みに積極的な業者を掘り起こし、商品開発・販売のため助言する役目。

鳥巣代表

 本業は全国各地で物産品の開発を支援するキースタッフ(東京)の代表。これまで数々のヒット商品を手掛けてきた実績を買われた。「インターネットの活用や産地の加工場に直売所やレストランを併設するなど、新しい販売の仕組みづくりを提案していきたい」と意欲を見せる。
 震災後、岩手県野田村から地域振興に役立つ新商品開発の相談を受け、村特産のホタテと天然「のだ塩」を組み合わせた特製ドレッシングを提案した。野田村の第3セクター・のだむら(社長・小田祐士村長)が生産し、村の「道の駅のだ」の観光物産館「ぱあぷる」で販売されている。
 ドレッシングは総量150mlのうち約4分の1がホタテというぜいたくな仕上がり。税込み650円と高めでも、「これだけ具材感を出せば売れる自信があった」。予想通り人気に火が付き、店頭に並べるとあっという間に売り切れ、生産が追い付かない状態が続く。
 野田村には、特産品を作る村営の加工場があったが、震災後の津波で流された。そこで、ドレッシングは被災を免れた村内にある国民宿舎「えぼし荘」内のキッチンを間借りして作っている。このため、1回の生産で100〜200本が限界だ。
 健康配慮型のコンビニなどからの引き合いもあるが、生産本数が不安材料。「流された加工場を再建できれば増産できるのに、『村営』が足かせになり復興交付金が出ない」と悔しがる。「野田村にとって、ホタテドレッシングはあくまでフラッグシップ商品。これに続き様々なアイデアを商品化していかないと本当の復興は難しい」とも。
 「過疎化が進んだ地域では、経済をグイグイ引っ張っていく企業もない。それなら行政主導で加工施設を建設し、産業や雇用の場を創出すべきだ。軌道に乗れば民間に任せればいい。地域の復興の土台づくりは、ある意味、行政の役割だと思う」と語る。