よりよい食品工場をつくる5S活動エピソード −3−
雑草との戦い――地域住民との輪広がる

 工場敷地内の草取りは雑草の生命力との戦いであった。夏場など1週間もすればまた生えてくる。そこで1本1本ていねいに、根こそぎ抜くことが大事。1年間の繰り返しにさすがの雑草も根絶やしにすることができた。1万坪弱の敷地は綺麗になり、わずかでも草が発見されるとすぐ抜かれた。
 草との戦いで“継続は力なり”を体験し、管理された状態になれば、次は正常に戻す時間が短い事を経験した。
 掃除はさらに範囲を広げていく。草取りに余裕が出来ると、植木の剪定が自主的に始まった。植木が整えられると、今度は建物の側壁に汚れが目立ち、清掃と塗装が始まる。創業以来掃除した覚えがないという側溝の大掃除も始めた。脂肪の多い製品がメインであったことと、排水溝は掃除のしにくい構造の箇所があり、掃除も不適でスカム(浮きかす)が付着し、虫が湧き、臭気も発していた。対策としてスカムを剥離、除去する酵素処理の方法を探し出してきた。
 各部屋排水溝の上流から酵素の液を点滴装置で添加し続けた。時間の経過と共に、面白いようにスカムは剥がれ、排水装置に流れ込み、臭気も格段に減少した。掃除により培った汚れを見逃さない自主性の醸成であった。
 草取りも会社の敷地外の近隣まで広がり、近隣の企業や県の所有地にも影響を与え、掃除の輪は大きく広がっていった。
 以前は悪臭、騒音などを撒き散らし、草ぼうぼうの会社で、近隣からは非常に迷惑がられ、移転の要望が主張されていた。しかし敷地の掃除活動のおかげで、近隣とのコミュニケーションがスムーズになり、この頃開いた住民との懇談会では「移転しないでくれ」との要望も聞いた。まさに掃除の威力である。以前を知る顧客も「きれいになった」とほめてくれた。