コンサルファームが食の課題解決に乗り出す
「食の未来創造支援オフィ
ス」を主導する荻生氏
外資系コンサルティングファームのＥＹストラテジー・アンド・コンサルティング��（東京都千代田区、近藤聡社長）は食の課題解決を図る「食の未来創造支援オフィス」を立ち上げると発表した。
農畜水産の生産者や食品製造、流通、小売外食、消費者、研究機関、政府をつなぐハブの役割を担い、海外輸出に向けたジャパンブランド戦略の確立やデジタル技術を活用した生産・流通のスマート化などを進める。
グローバルに展開するコンサルファーム大手が食分野の課題解決に特化したプロジェクトを立ち上げるのは初とみられる。産官学連携による食分野のルール形成を推進し、ビジネスインパクト（市場創出）をめざす。
荻生泰之ストラテジックインパクトパートナーは記者発表会見で「地域活性化や食料安全保障、循環型社会の構築、新規価値の醸成などの課題に対し、我々はルール形成を図りつつ、ＤＸ（デジタル変革）やサプライチェーンマネジメント改革、フードテック、アグリファイナンスなどを活用して新しいソリューション開発に取り組む」と語った。
日本産品が優位に立つルール形成を
「食の未来創造支援オフィス」の取り組み方針の筆頭に「ルール形成」を掲げる。環境規制・環境基準から生分解性ポリ袋の市場が生まれたように、ルール形成による市場創出は近年注目を集めている。食分野でも同じようなことを起こせる可能性はある。
例えば野菜の鮮度を規定するモノサシ（スタンダード）を新たに設定するとともに、モノサシを活用して国際ルール化（レギュレーション）することで、高品質な日本産の野菜が優位なビジネス環境を作り出せる。
荻生氏は「ノルウェーのサーモン、ニュージーランドのキウイは国の統一ブランドを確立している。日本もオールジャパンによる総合力での輸出に向け、ルール形成を進めることが重要」と語る。
ブロックチェーンの新手法を提供
生産現場や流通のスマート化支援では、ロボットやＡＩ、ＩｏＴを活用して生産性向上、作業性改善、品質・付加価値向上、持続性向上に取り組む。６次産業化による地域活性化にもつなげる。
さらにブロックチェーン技術を活用したトレーサビリティの構築や、在庫情報を共有するのではなく、「次回いつ発注が起きそうか」という情報をブロックチェーンで共有する新たな仕組み（特許取得済み）の提供も計画している。データプライバシーに配慮したサプライチェーンマネジメントの全体最適化を実現する。
食分野の課題解決を成功に導くには実効性をどの程度担保できるかがカギを握る。特に今回は食分野の様々なステークホルダーに加え、政府も巻き込んだ枠組みをめざすとしている。
荻生氏は「私が所属する部署は民間だけでなく政府に対してもふだんから政策提言を行っており、産官学で社会課題解決に取り組んでいる」と語り、政府と連携できる立場にあることを強調する。日本政府を動かし、ルール形成の枠組み構築をリードできるのは唯一自社だけとの自信をのぞかせる。