多品種の商品開発力を強みに商圏拡大
群馬県内に新工場、生産能力増強へ
サトウ産業(株)
日産６万3000食の生産能力を持つ本社工場
惣菜ベンダーのサトウ産業（新潟県魚沼市、佐藤総一郎社長）はカップサラダや和洋惣菜、業務用カット野菜、フルーツ、練りサラダなどを新潟県内や関東圏のローカルスーパーに卸している。本社工場は365日、24時間稼働しており、日産約６万3000食の生産能力を持つ。今年夏には群馬県内に新工場が竣工する。
本社工場は６年前に新設した。当時は７ラインだったが、受注先や商品アイテムが拡大し、現在は12ラインがフル稼働状態にある。原料の品目数は約1000、アイテム数は常時150以上に上るが、「新商品の開発やリニューアルを毎月繰り返しているため数量も種類もその都度変わっている」（佐藤昭二専務）という。
30品目のバランスサラダやツナ＆コーンサラダなどのカップサラダをメインに、かぼちゃのそぼろ餡かけなどの惣菜、ポテトサラダなどの練りサラダ、業務用のカット野菜・天ぷらキットを製造する。
新潟県内が中心だった商圏は関東エリアが約50％を占めるまで伸長し、売上高も10年ほど前に比べ約３倍に伸びた。成長エンジンは商品開発力。旬の野菜と果物を使った冷たいデザート「牛乳寒天」は関東で大ヒットした。毎年２月に行われる初午いなりの行事に目を付けて開発した「肉詰めいなり」は季節の定番商品に育った。こうした自社オリジナル商品をはじめアウトパックが評判を呼んできた。
関東圏進出のきっかけになった牛乳寒天
初午いなりの行事用に開発した肉詰めいなり
働き方改革を実践、残業時間削減
サトウ産業は日本惣菜協会のＪｍＨＡＣＣＰを
取得している
本社工場にはパート従業員を含め約300人が働く。このうち外国人労働者は約50名。ミャンマーからの技能実習生約20名の他、地元の国際大学に通う留学生とその家族が働く。技能実習生は今年新たに15人増える。佐藤専務によれば、優良受入れ先として今後も増員が可能だという。
だが、外国人労働者を迎え入れても慢性的な人手不足感は否めない。さらに最近は「残業時間や休日出勤日数が多いと人は集まらない」（佐藤専務）。人手不足→残業時間・休日出勤増→人が集まらない→人手不足…という悪循環を断ち切る必要がある。そこで「働き方改革をこの１年で進めた」（佐藤専務）。その結果、残業時間を半分近くまで減らすことができたという。具体的には、これまで専任だった野菜処理と加熱調理の各従業員の多能工化を進め、業務量に偏りが出た場合は臨機応変にサポートするようにした。
佐藤専務は長時間労働が改善したことで、人材募集に加え従業員の定着率向上につながることにも期待を示す。
30パックの小ロット受注にも対応
カップサラダは一次加工室で野菜の下処理を行う。殺菌には微酸性電解水を使う。盛付はラインに多くの人員を配置し、手作業で容器に詰めふたをしていく。ウエイトチェッカーや金属探知機を通過した商品に自動でラベルを貼り付け、製品異常の有無は目視で確認する。
惣菜の調理には蒸気釜やスチームコンベクションオーブン、フライヤー、真空冷却機などを使う。
牛乳寒天は以前はやかんを使って手作業で原材料を詰めていたが、今は卓上型の小型自動充てん機を導入している。
仕分け工程は多品種生産のためデジタルピッキングを採用している。
サトウ産業の生産体制は多品種少量生産が基本。中には「新店オープン用に100パックや30パックで作ってほしい」といった受注もあるが、佐藤専務は「小回りのきく対応こそ当社の存在価値」と語る。
金属探知機で異物混入対策
ウエイトチェッカーや金属探知機を通過した製
品異常の有無は目視で確認する
新工場は今年９月稼働開始
商品開発と営業強化で会社の成長に貢献する
佐藤専務
新工場は群馬県前橋市内の工業団地に建設する。竣工は８月。稼働は９月を予定している。敷地面積は約9500�屐�床面積は約3200�屐Ｅ換�造り平屋建て。関越自動車道の渋川伊香保ＩＣや前橋ＩＣ、北関東自動車道の伊勢崎ＩＣから車で15分程度と好立地にあり、物流コストの削減効果が期待できる。
新工場の設計施工はクリーンな工場の生産設備を得意とする中央設備エンジニアリングが請け負った。佐藤専務は「結露の問題や虫の混入対策などサニタリー管理の面で多くの実績を持っているので安心して任せられた」と語る。
生産ラインは本社工場から２つを移設し、合計12ラインを予定している。主な生産品目はカップサラダや惣菜など。多品種生産に対応するため、従業員は将来的に約300名まで確保する。また、結露対策に加え「生野菜の取扱量が増えているため」（佐藤昭二専務）低温管理を行う。
新工場建設にはＰＢ商品に対応するための生産能力増強というねらいもあり、佐藤専務は「お客様に寄り添った営業を心掛け、ＰＢ商品のご要望にも積極的に応えていきたい」としている。