私財投じミャンマーに図書館付き学校を建設
インフォマート 取締役 大島大五郎氏

 インフォマート(東京都港区)の大島大五郎取締役が私財を投じてミャンマーに図書館付き小中学校校舎を寄贈している。1月にタウンカンカレイ寺院学校を寄贈、来年3月にはパーコン小中学校を寄贈する。ミャンマーに学校を贈る前例は業界にない。同国の教育支援に関わる契機や目的などを聞いた。

    大島取締役

 −−学校支援の動機は何か、なぜミャンマーなのか。
 大島 亡くなった村上勝照前社長が「子供のために何かしたい」と言っていた。それに感化されたところもあるが、自分自身で将来、子供達に貢献できることをしたいと考えていた。

 都内の居酒屋で働くミャンマー人男性との出会いが、ミャンマーに学校を建てるきっかけとなった。彼は母国でタクシー会社の社長を務めている。日本での稼ぎを送金するたびにタクシーの台数が増えるから、日本は良い国だという。彼は帰国する度に、娘への土産として日本の絵本を買っていく。ミャンマーには絵本がなく、読み聞かせ文化もないと聞いた。そこで約4年前から(公社)シャンティ国際ボランティア会を通じてミャンマーに絵本を贈ることに関わり始めた。

 シャンティ国際ボランティア会はモデル図書館の建設・整備やその運営指導、移動図書館、読み聞かせの活動、さらに学校の建設まで展開している。

 −−ミャンマーに図書館はない?
 大島 図書館はあるが、粗末な大人向けの施設で、在庫の本はボロボロ。子供が勉強する場ではない。校舎、図書室がないのが当たり前。そこで私費の数百万円で、現地に図書館付きの私立小中学校校舎を贈ることにした。出資から約1年3カ月後にあたる今年1月30日に「タウンカンカレイ寺院学校」が開校した。生徒数は約90名。開校式に家内と一緒に参加した。その立地は商業都市のヤンゴンから車で約7時間と遠い。

 −−現地での反響は。
 大島 現地に辿り着くと沿道に村人が大勢いた。私達を歓迎するために村人の大半の約400名が集まったという。まるで神様扱い。私の手をつかんで泣いている人もいた。地方の暮らしは貧しく、ノートを買うのも厳しい生活環境と聞いた。そこで校舎や紙芝居、絵本を寄贈するだけではなく、各生徒にノート10冊、ボールペン1ダースずつをプレゼントした。

 返礼として、学年毎に歌や踊りを披露してくれた。同学年でも身長差があることに気づいた。学年遅れの入学などが当たり前で、年齢が違う子が同学年にいるという。

        寄贈校舎の前で記念撮影する大島夫妻(中央)と児童・先生ら

日本のフード業界で活躍できる人材を

 −−ミャンマーの進学率は低いのか。
 大島 ミャンマーの子も大半が小学校に進学するが、約3割は卒業できない。中学の進学率は約6割、高校進学率は約3割。軍事政権や民族対立が長く続いた結果、同国の平均年齢は28歳と極端に若い。内戦の弊害が教育に大きく影響している。カンボジアよりも学校が足りないのがミャンマーの実状。長い時間をかけて同国の教育支援に協力したいと考えている。

 教育の環境が整えばミャンマーの経済発展につながるはず。今後も校舎を贈るなら図書館付きにする。図書館があることに価値がある。10年以上を費やし支援したい。

 −−今後の予定は。
 大島 新たに「パーコン小中学校」の校舎を寄贈する。現在建設中で、来年3月完成の予定。立地はタウンカンカレイ寺院学校から車で3時間程度。パーコン小中学校の場合、公立の学校となる。生徒数約100名。教室の数は当初予定が4室だったが、感染症対策で設計を見直し3室にした。この開校式にも駆け付ける予定。

 学校を作るのがゴールとは考えていない。そこで日本語やIT、フードサービスなどが学べる専門教育を提供できればと考えている。日本のフード業界で活躍できる人材を輩出できるよう支援したい。ベトナムやタイ、インドネシア等でも教育支援に関わりたいと構想している。

              児童から花束を受ける大島夫妻