極洋グループに2013年加わった焼き魚メーカー、エィペックス・キョクヨー(兵庫県姫路市、英賀隆=あが・たかし社長)は約40年間、焼き魚一筋に歩んできた。創業当時は家庭で魚を焼くのが当たり前の時代で、最初の5年間は苦難の連続だったというが、ブレることなく「おいしいものを作り続け」(英賀社長)、やがて時代が追い付いた。
新たな需要を掘り起こそうと7年前から燻製製品の商品化に着手、3年前には世界唯一という連続式の燻製装置を開発し、量産を可能にした。
燻製は国内だけでなく、海外展開も視野に入れており、来春ベルギー・ブリュッセルで開催されるシーフード・ショーへの出展を考えているという。
現工場は2001年(平成13年)に建設した。極洋グループ入りを機に6億円強を投じ、倉庫として使っていた3階フロアに独自開発した連続式の燻製製造機を導入した。燻製はこれから本格販売するが、現状は焼き魚が製品の99.5%を占めている。
本社・工場の外観
原料はさば、シルバー(沖ぶり)、さわら、からすかれい、ほたて、いかなどおよそ15魚種を扱う。冷凍で仕入れ、原料庫に1〜2日分を保管する。
使用する際は解凍庫に移し、一晩かけてマイナス5℃前後にする。完全に解凍させることなく、少し柔らかい程度にする。ほぼ凍った状態で熟練者が切り身にし、ドリップを逃がさず鮮度と質の高い原料のおいしさを保持する。これが他社との最大の差別化ポイントと考えており、英賀社長は「品質的価値は最右翼に位置すると自負している」と自信を示す。
切り身は濃度5%の塩水に漬けて旨みを閉じ込めた後、表面についたアクを洗い流し、さらに一晩寝かせて味を浸み込ませる。その後、焼成ラインに運ぶ。
焼成機は2台で毎時5000〜6000切れを焼く。特注品で、6ユニットに分かれている。それぞれ200〜300℃の間で細かく調節することができる。ガスを熱源とした熱風を庫内で循環させている。基本は最初に高温で焼いて皮をパリッとさせ、段階的に温度を下げる。切り身にも表と裏があり、魚の皮が見える側を表と呼ぶ。切り身は表を上にして焼成機のベルトに並べる。
8〜10分かけて焼き上げた切り身は、高橋工業製のトンネルフリーザーにくぐらせ、マイナス45℃の冷気で冷やす。照り焼き系商品は焼成直後に噴霧器のような機械でたれを吹き付ける。
冷却後はトレーに入れ、ラップ包装し、シールを貼って金属検知器に通し、箱詰めする。
極洋が販売している市販用調理冷食「シーマルシェ」の場合、冷却後にチルド用の焼き魚とは反対方向のベルトに流して真空パックした後、別のフリーザーで急速冷凍して内部まで完全に凍結させている。
焼き魚は近隣のスーパーにはチルドで供給しているが、遠方には冷凍で流通させ、店頭でチルド販売している。
製造は午前7時から開始し、最大で午後3時まで。焼成機内に魚の油が付着するため、毎日1時間半かけて清掃する。生産能力は日産10万切れ、4万2000パック。
社名のエィペックスは「頂点」を指す。
ほぼ凍った状態で切り身にする
焼成前のさけの切り身
トレーに入れ、ラップ包装する工程
英賀社長
燻製を製造する際に重要なのは、フロアに煙を充満させないこと。3階フロアの燻製製造機は製品の入り口と出口に配管を通して煙を供給したり、吸い込んだりする。桜のチップがメインだが、ブナ、りんご、ナラのチップを使うこともあり、製品の色の濃淡を調節することができる。
英賀社長は「これから燻製は(市場に)定着する。魚はウィスキーやワインにも合う。海外にはスティック状に成形したサンドイッチ用の燻製を提案したい」と意気込む。そのため1年以内に米国向けのHACCPの認証を取得し、次の段階としてよりハードルが高いEU向けの認証取得をめざしている。
同社の販売先は80〜85%が量販店だが、販路の多チャンネル化を図るため、コンビニ向け商品を試作中。和風・洋風・燻製焼き魚を賞味期限2週間程度のロングライフ商品として完成させ、来年度中の販売を計画している。