「エンジニアリング力」で長持ちビジネスを
福島工業 福島 裕社長
福島工業といえば店舗や厨房の業務用冷凍・冷蔵庫やショーケースなど川下系設備の大手というイメージが強い。しかし、1000�岼幣紊梁膩燭領篥燹ξ簑∩匕砲篳�流センターにも多くの実績を持っており、年間のプレハブ施工は約2000基もある。さらに、昨年にはトンネルフリーザーなど川上の冷凍設備に強い�盒狭�業を傘下に加えた。�盒狭�業の独自性を継続しながら相乗効果を目指すという。
福島社長
――フリーザーメーカーの�盒狭�業をグループに加えた。
福島 当社の仕事は厨房機器や低温ショーケースなど川下に近い。一方、当社の仕事を川上に上がっていけば冷凍食品工場など�盒狭�業の仕事に行き着きます。
――同じ流れでつながっている。
福島 当社も大型の冷蔵倉庫などは手がけていますから。
――冷蔵庫産業は大手が存在する。
福島 大手で、自社でエンジニアリングまで手がけているところは確かにありますし、そういう所は社内に詳しい専門家がいます。一方でゼネコンも冷蔵倉庫を手がけていますが、建てるのがメインです。そこで重要なのが後々までのメンテナンス。ゼネコンが建てる場合も分離発注するようになりましたし、そうでなくても省エネとか環境対応といった顧客側の要望は多様にありますから、当社はそういう所に差別化で入っていけます。もちろんゼネコンがそうした対応を全くしていないという意味ではないですよ。
――なるほど。
福島 �盒狭�業との連携については、トンネルフリーザーを導入した企業があれば、そこで作った商品を保管する倉庫が必要になりますし、当然当社がそこにプレゼンしにいけるわけです。
――連携の具体的な実績は？
福島 まだ半年ですが、ぼちぼち出てきました。当社は全国に６０拠点以上のネットワークがありますが、一番大きいのがメンテナンスの仕事です。�盒狭�業とは仕事内容が若干異なりますが、技術的なものは全くの畑違いではありませんし、学べばできる範囲です。
――メンテナンス網が整っているのでユーザーも安心できる。
福島 当社がもう少し川上に近づくということですね。メーカーは物を作るだけでなく、違うビジネスに進出するようになりました。多角化する事で色々な提案ができるようにもなります。つまり相互の垣根が低くなるのではないかという考え方。当社は300億円の売上げで�盒狭�業が30億円ですが、足して330億円になるのではなく、400億円になることが必要なのです。両社が一緒になってしまうのではなく、それぞれが伸びていかなくてはならないのです。その点で�盒狭�業の柳井社長は立派な経営者ですから、互いに独立しながらも、互いの良さを発揮できるでしょう。
――相乗効果を出すには？
福島 互いの機能を活用することで顧客にとってメリットがあるということです。川上と川下の仕事がうまく連携すれば、ビジネスチャンスやコストリダクションにつながるでしょう。
――第３四半期は減収増益だった。
福島 連結ではそうですが、単独では減収横ばいと厳しい。単独では売上げが６％ほど減ったが、連結で４％減なのは高橋工業の売上げが半期分乗ったからです。連結の数字は海外も含みます。
――海外事業は？
福島 韓国、台湾、上海、北京など。これが大きい。以前は海外をそれほど重視していませんでした。日本で作ったのを売るだけではなく、アフターサービスに力を入れたり、当社以外の商品も積極的に売るようにと指示しています。
――国内のマーケットである外食や小売は苦戦している。食品スーパーはまぁまぁだが。
福島 当社の仕事の中で、食品スーパーはまだ良いほうです。それも大手ではなく地域密着の店がいい。客が求める部分にきちんとはめ込めるところです。外食は厳しいがマクドナルド、日高屋、王将、サイゼリヤなど元気のいいところもある。全体的には大手チェーンは厳しいが、外食産業は単独店の参入障壁が低いため新しく開店する店も少なくない。その点で、当社の仕事は(外食産業が厳しくても)あります。もっとも、居抜きの店を買うケースも多いですが。
――中古で済ませる場合もある。
福島 中古設備の影響はそんなに大きくない。買う方も１台は中古であとは新品とか、全て中古で揃えることは少ないですから、その点では心配ありません。
――外食の個人店は流行っているところも少なくない。
福島 その通りで、目的がはっきりしている店は流行っている。代替がきく店は価格競争に流されてしまいます。
――「安さ」がクローズアップされがちなのもいけない。
福島 日本の場合、安さへの需要もありますが、その反対の需要もある。ただ、今は贅沢が憚られる雰囲気はありますね。それでも一時よりは経費節減の締め付けが緩んでいます。まぁ、本当に厳しい時期は節減しか方法がなかったからですが。
――東芝も赤字ではあるが、その幅が小さくなったから定昇を認めるなど、大手企業に景気の下支えをしようとする余裕が生まれている。
福島 その意味では少し様相が変わってきました。
――ファミリーレストランチェーン業態は厳しい。ある人は、チェーンにして上場し株主利益を追求したからいけないのだという。チェーン理論は誰のためにあるのかと疑問を呈していた。
福島 「誰のためにあるのか」は面白い言葉ですね。
――一方、今は店がそれぞれ独自のメニューを出すことを認めている餃子チェーンの店が伸びている。
福島 チェーンはオペレーションを築き、工場で集中的に作るから利益が出る。そこはさらに店舗でも利益が出るから伸びているのでしょう。
――来期の課題は？
福島 顧客に対して製品だけを売るのではなく、技術とアフターサービスの三位一体型で対応していきます。それを「エンジニアリング力」の強化と呼んでいます。作った製品を売るだけではなく、どうやったらコストが下がるか、どうしたら売れるかという提案をしていきます。特にこれから期待しているのが「長持ちビジネス」です。
――それは？
福島 例えばユーザーがこれまで６年で買い換えていた設備を９年使うようになるとします。それなら５年目当たりに「この部品を代えてはいかがですか。そうすれば９年持ちますよ」と提案するチャンスになるわけです。顧客にもメリットが大きく、当社の仕事にもなります。それを総称してエンジニアリング力と呼んでいるのです。
――環境、安全については？
福島 環境対策にしても、省エネを実現するにはメンテナンスが重要になります。顧客の商売に貢献するということは、突き詰めれば消費者のため。それができれば顧客も万歳となります。当社の理念の一つは「環境・安全・安心をテーマにお客様と協働し、生活者の幸せに寄与」することですから。
（ふくしま・ゆたか）大阪生まれ、1950年（昭和25年）生まれ59歳。京セラの稲盛和夫氏が主宰する若手企業家のための経営塾「盛和塾」で学んだ１人であり、いわく「稲盛和夫さんの崇拝者」。