織茂会長「現場の人手不足が課題に」

 東京冷蔵倉庫協会(東冷倉)の織茂裕会長(東京団地冷蔵社長)は年末会見を11月30日開き、事業方針の進捗状況と課題、庫腹概況などについて説明した。オペレーター(現場従業員)の人手不足やトラックの待機時間、設備の老朽化対策などを課題に挙げた。

      織茂会長

 会見の冒頭、2018年3月に稼働開始を予定する、自身が社長を務める東京団地冷蔵について「工事は順調に進んでいる」とし、竣工は予定通りとの見通しを示した。
 東京の庫腹概況について織茂会長は「例年の年末前の傾向と異なり、10月の都内庫腹は減少している。水産物、畜産物の入庫が減り、在庫率が下がった」と説明した。
 10月の在庫率は前年同月比2.5ポイント減37.8%。2月から40%を下回るようになった。
 在庫は夏頃に若干上昇傾向となったが、8月以降は下がり続けている。その要因について「水産物の漁獲減や畜産物の回転率アップがあると考えられる」との見解を織茂会長は示した。
 円安が続くと、外貨が減り、在庫率がさらに下がる可能性がある。

細かい作業が増え、ますます人手が必要

 回転率は高まっている。この点に関し織茂会長は「回転が上がることや付帯作業の増加は冷蔵倉庫の収益アップにつながるが、人手不足の問題が支障になる。一方、細かい作業が増え、ますます人手が必要になっている」とし、オペレーター不足が業界の共通課題になっていることに言及。さらに「人手不足が時間外労働の増加につながる」とし、悪循環になっていることを示した。
 オペレーターの定着率アップのためにも、作業環境改善や業界の魅力アップを図ることが業界の課題のひとつになっている。
 織茂会長はトラックの待機時間問題についても触れ「当日になって入出庫オーダーを入れる荷主が少なくない。特に突然の出庫要請が多い。出庫対応には時間を要するため、事前オーダーがないと、トラック待機時間の増大につながる」とし、問題解決のために「荷主、冷蔵倉庫、運送業者の三位一体での課題解決が必要」と強調した。
 出庫対応に時間を要するのは、冷蔵倉庫の構造上の問題もある。東冷倉会員冷蔵倉庫の平均築年数は36年を超えている。

当日の出庫オーダーが多いと困る

 近年の冷蔵倉庫は流通型が多く、素早い入出庫に比較的対応しやすい。しかし築年数が古い冷蔵倉庫の多くが多層階構造の保管型のため、特に出庫は時間を要する。そのためトラック待機時間を短くするには出荷オーダーを早めに入れるのが最善。ところが現実には「当日の出庫オーダーが多い」(東冷倉)。
 そこで織茂会長は「荷主企業も交えた話し合いが肝心」と繰り返し強調した。
 設備の経年化そのものが問題となっていることや、スクラップ&ビルドのために必要な代替地が不足している問題も織茂会長は課題に挙げた。代替地の確保については国交省や自民党議連に対し、日本冷蔵倉庫協会とともに働きかけている。
 さらに「中小企業の体力不足」も課題として示し、設備更新が必要でも資金が足りない中小会員が多いことを示唆した。
 自然冷媒への転換も冷蔵倉庫業者は不可欠となっているが、そのためには「高額な投資が必要になる」と指摘した。