漁船の新しいアンモニアCO2冷凍機

 前川製作所は国の復興支援事業として建造していた共同利用施設の沖合イカ釣り漁船に、漁船としては初めてアンモニア炭酸ガス冷媒の冷凍設備を導入した。完成したのは岩手県大槌町の佐野晃船主が建造していた第八十一明神丸(185t)。

漁船で初の脱フロン化

 同社は陸上の冷凍設備にアンモニア炭酸ガス(NH3/CO2)冷媒のコンパクト型冷凍設備「ニュートン」を、すでに数多くの食品工場や冷蔵庫に納入している。今回、これらの陸上設備に続き、漁船の冷凍設備に初めてアンモニア冷媒の冷凍システムを納入設置した。
 地球温暖化対策としてフロンガスR22の使用禁止に伴い、超低温のマグロ漁船やさんま漁船ではR404Aに代替えしているが、将来的にはこれらも規制対象となることが予想される。
 今回採用された沖合イカ釣り漁船の冷凍温度は凍結庫−40℃、魚艙−35℃。自然冷媒であるアンモニア/炭酸ガスでの冷媒でも冷凍可能な温度帯であることから、規制を受けないアンモニア/炭酸ガス冷媒の設備が導入された。
 アンモニア/炭酸ガス冷凍機の特徴は、75kwの冷凍機2台を設備する場合で比較すると、R404A冷媒は従来のR22と比べて9.4%ほど消費電力が増える。しかし、アンモニア炭酸ガスは7.8%ほど消費電力が少なく、省エネとなる。また、冷媒の価格をR404Aと比較した場合kg当たりアンモニアはその15%、CO2はわずか6%となっている。
 今回導入されたアンモニア/炭酸ガス冷媒システムは、プレートクラーを介してアンモニア冷媒と二酸化炭素冷媒を熱交換しているため、凍結室や魚艙の冷却コイルに冷凍機の油が溜まることがなく、蒸発器の性能低下とならないため、消費電力を実質25%以上抑えることが可能となる。
 アンモニアで液化された二酸化炭素を、液ポンプで魚艙・凍結室に送液するため、液戻りの心配がなく、運転操作が非常に容易。取り扱いも従来より操作するバルブが少なく、簡単。
 前川製作所は脱フロン対策の取組みとして、アンモニア炭酸ガス冷媒のほかに、超低温設備では空気冷媒の「パスカル」装置などを取り揃え、自然冷媒による「省エネ」と「脱フロン化」を実現している。
 今回、初めて漁船にもアンモニア/炭酸ガス冷媒の冷凍機が導入されたが、これに続き、沖合イカ釣り漁船をはじめ、遠洋カツオ一本釣り漁船、底引き漁船、まき網漁船などに積極的な導入を進めていくとしている。