「技術を絶やすな」、新機種相次ぎ開発
花木製作所 代表取締役社長 米倉 豊治氏

 食肉加工機械メーカーの花木製作所は今年、新製品3機種を相次いで開発した。「機械メーカーは絶えず新技術を開発し続けることが大事」と米倉社長は語る。次代へバトン(技術)を繋ぐため、米倉社長の奮闘は続く。

     米倉社長

 ――今年は新機種を相次いで開発した。
 米倉 スモークハウス、チョッパー、造粒機の3機種を開発しました。本来、これらを4月の「食肉産業展」で発表し、多くの人に見ていただきたかったのですが、震災の影響で中止を余儀なくされたため、叶いませんでした。どの機種も完成に自信を持っていただけに残念です。現在、これらの新機種は当社の足立第一工場で見学会を行なっているので、そちらでご覧いただけます。

 ――スモークハウスやチョッパーは食肉加工機械メーカーである御社が最も得意とするところ。この「造粒機」とは?
 米倉 バイオテクノロジー技術を利用した畜産・養魚飼料生産プラントや肥料プラントの最終工程に導入を勧めています。飼料プラントの主な原料としては、畜産汚泥や水産汚泥(脱水ケーキ)が知られていますが、肥料プラントでは下水汚泥などが使われています。これらの原料をバイオ技術で発酵分解したものを造粒機でペレット状に加工します。これにより、食品メーカーの生販一貫体制への対応と資源リサイクル活動をサポートできます。

 ――廃棄物処理関連はこれからまだまだ伸びそうだ。
 米倉 資源リサイクルをターゲットにした造粒機事業は8年前から手がけています。10年ほど前、東京水道局から天日乾燥施設に利用したいという話があり、それが開発のきっかけとなりました。日頃からお付き合いしているユーザーから畜肉汚泥や水産汚泥を何とかしたいという声を多く聞いており、本格的に新事業参入に踏み切りました。今回、発表した造粒機は5作目となります。

発酵分解した汚泥をペレット状に
加工する造粒機

 ――食肉加工機械との違いは?
 米倉 ベースはミンチにする機械の構造を生かしています。見た目はほとんど変わりませんが、内部のスクリューがだいぶ違います。ここに最新技術を注力し、工夫を施しました。

 ――10年も経たないうちに5機種目とは早いペースだ。
 米倉 現状を維持するのがやっと、という機械メーカーもありますが、新しい機械を開発し続けることで当社がまだまだ健在だ、ということをアピールすることになります。食品機械は寿命が長いので、生き残るには、新機械の開発とともに、新市場を創出しなければなりません。機械メーカーは絶えず新技術を開発し続けることに尽きます。ユーザーもそれを望んでいることでしょう。

 ――心強い言葉だ。
 米倉 当社の造粒機事業は始まったばかりで、そのシェアは食肉加工機械に比べてまだまだ小さい。新市場を創出するとともに、基幹事業である食肉加工機械がぶれてはいけないと思っています。

 ――新たに事業を拡大したくても、後継者問題を抱えて苦労している機械メーカーもあり、深刻だ。
 米倉 私がこの業界に入ったのは12年前で、それまでは重機メーカーに在職していました。縁があり当社に入社しましたが、当時、実は当社でも後継者問題を抱えていました。私自身、この“ハナキ”を廃業させたくない、存続させたいという気持ちが強く、社長になる決意をしました。2006年のことです。
 今、私がやるべきことは新しい機械を開発し続けるとともに、後継者の育成です。経営のノウハウなど教えることはまだまだ残っています。次の世代にバトンを渡せるよう、今が踏ん張りどころですね。