東南アジアやインドなどの南方スリ身を扱う商社によると、スリ身価格の高騰でベトナム、マレーシア、インドネシアでのスリ身生産が拡大しており、特にベトナムでは今年、昨年の倍の３万ｔが日本向けに輸入が見込まれている。こうした南方スリ身の供給増や日本国内でのスリ身在庫の増加から、南方スリ身の市況は軟化すると見られている。
米国産の冷凍スリ身の供給が少なくなり、価格が高騰しているが、その一方で東南アジアではスリ身生産が拡大している。ベトナムでは最近、新たなスリ身工場も稼働しており、メコンデルタのキンジャン地方では「カヤス社」の新工場が稼働し始めた。キントキ、イトヨリ、エソなどの魚を原料に年間6000ｔのスリ身生産能力がある。ベトナムでも燃油は天井価格となっているため、漁業生産は低調だが、原油価格の下落も起こっており、今後、燃油価格が下がれば、原魚の確保も活発化すると見られる。
中国でも海南島の陵水県に和信漁業がタチ、エソ、イトヨリを原料に年間2〜3000ｔの生産能力のスリ身工場を稼働している。
一方、国内では北海道で陸上スリ身が、価格の高騰をうけて生産を活発化しており、このままのペースで生産が進むと、今年は昨年の1.5倍の６万ｔの生産になるとの予想もある。国内の在庫も８万ｔと増加している。
このため、秋からのねり製品の本格需要期にもかかわらず、水産ねり製品メーカーからの南方スリ身の商談は低調で、動きがない状態。
今後、タイ、インドをはじめ各国での秋の漁が活発化してくると、南方スリ身の生産がさらに活発化することから、余り気味の兆しがうかがえる。