工場の再編、設備の新・増設相次ぐ
今後の冷凍食品業界、「10年後」テーマに

 冷凍食品業界は大震災の経験と単身世帯の増加、高齢化の進展などを背景として需要を大きく取り込み、特に家庭用の売上げは各社好調に推移しているが、一方で、為替相場の円安傾向などを背景としてコストプッシュが不可避となりつつある。さらに別の理由で工場の再編、設備の新・増設が今後急速に増えることが予測される。
 業界のキーワードは『10年後、20年後を見据えた事業構築』。

 冷凍食品メーカーは、大手を中心として、懸案となっている生産体制の再構築に本格的に取り組むとともに、販売、物流、あるいは商品提案の仕方にも改革のメスを入れ、10年後、20年後の市場に対応できる基盤構築を急ぐことになる。
 わが国の冷凍食品の主力と位置づけられる工場はいずれも老朽化が進んでおり、工場のリニューアルは各社緊急課題となっている。
 わが国の冷凍食品メーカーは1970年代初期の、71年(昭和46年)、72年(同47年)に参入したところが非常に多く、各社の主力工場もその当時建設、竣工、操業開始したというケースが多い。
 有力メーカーの冷食事業開始時期を並べると、次の様になる。
 ▽アクリフーズ(旧雪印乳業として)1973年▽味の素冷凍食品(味の素)72年▽キユーピー(三英食品販売)71年▽ケイエス冷凍食品(ユニチカ三幸)72年▽昭和冷凍食品(昭和産業)73年▽日清フーズ(日清製粉)72年▽日本製粉73年▽不二製油73年
 事業開始と工場竣工・操業開始時期には多少のずれがあるが、少なくとも70年代初期(昭和46、47年、48年)に多くの冷凍食品工場が立ち上がったことは間違いない。
 70年代初頭の参入ラッシュ前から、ニチレイ、日水など水産大手会社とテーブルマーク(当時加ト吉)、日東ベスト(ベストフローズン)、ヤヨイ食品(弥生食品)など一部の有力メーカーは冷凍食品を手掛けていたが、それも事業開始からいまや40年以上の歴史を重ねていることは各社同様。
 40年を経て、工場の立地環境も事業環境も大きく変わった。竣工当時は何もなかった工場周囲に住宅地が迫り、汚水処理、臭気対策が重要な仕事になった。省エネ、環境保全対策も不可欠となっている。
 産地立脚が当然だった工場立地条件は消費地に近い方が有利に変わり、大震災の経験から、海辺を避ける、一極集中の生産体制はリスク分散のため複数工場に商品を振り分けるべし――など、工場に対する基本的認識を一変させる動きが次々に見えている。