速乾性・定着性の高い産業用インク開発
自社ブランド立ち上げ、ユーザーに新提案
プリンタサプライ品を製造販売するユニオンケミカー（大阪府枚方市、木村栄一社長）は産業用インクジェットインクの事業領域を強化するため、自社ブランド「ＷＯＣＣＳ（ウォックス）」をこのほど立ち上げた。
日付けやロット番号、消費期限、バーコードなどの商品情報の印字（マーキング、コーディング）に特化し、乾燥時間が数秒という速乾性の高いインクや、印刷速度が他社の２倍にもなるカートリッジ、操作性の高い専用プリンターを総合提案する。ユーザー企業が抱える食品表示などの課題解決に貢献する。
発泡スチロールにも定着するインク開発
同社はカーボン複写紙の開発・製造からスタートし、今年100周年を迎えた。長年培ったインクの調合技術を生かし、高機能なインクジェットインクを開発している。
特に速乾性が高く、定着性が強い有機溶剤のメチルエチルケトン（ＭＥＫ）を使ったオリジナルインクの開発を得意とし、ＰＰやＰＥＴなどのフィルム、コート紙、塩ビチューブ、缶など非吸収性の素材にも短時間でしっかり定着するインクの開発に成功した。インクがにじみやすい発泡スチロール（ＰＳ）にも対応できる。
マーキング＆コーディング事業部の成島和明東日本販促リーダーは「産業用のインクカートリッジ市場は海外大手が独占しているが、非吸収性の素材に対する印刷は難しく、ユーザーの満足度は高くない。当社が入り込む余地は十分ある」と語る。
独自のインク調合技術で速乾性とロングデキャップタイプを両立したインクカートリッジ
カートリッジ交換で吐出トラブルを解決
印刷方式は汎用性の高いサーマルインクジェット方式を採用している。通常はノズルがプリンターに搭載されているが、同社はノズルが付いたＦＵＮＡＩ製のインクカートリッジを採用してインクを充てんしているため、ノズルが目詰まりを起こした場合は、カートリッジを交換するだけですぐに復旧できる。
インクカートリッジは�‖冤郎淦�が高く、ノズルを２列配置して印刷速度を２倍に高めている、�０�刷中に片方のノズルが詰まっても、もう一方のノズルが印字を補完するなどの特長を持つ。
インクは速乾性と「ロングデキャップタイム」という相反する機能を両立している。デキャップタイムはプリンターを放置している時間のことで、ノズルがむき出し状態で待機していると、インクが乾いて印刷不良が発生しやすくなる。同社は独自のインク配合で１時間のデキャップタイムを可能にし、印刷を一時ストップして１時間後に再開してもカスレや印字の欠けなどが発生しない。「昼休憩後に作業を再開しても支障はない」（成島氏）という。
乾燥時間１秒の超速乾性を実現
オリジナルインクの「ＷＴＣ-ＴＳＭ06」の印刷スピードは最大で毎分120ｍ、乾燥時間３秒、デキャップタイム１時間。「同08」はデキャップタイムが「06」よりやや短いが、乾燥時間はわずか１秒と超速乾性の特長を持つ。「ここまでの速さを実現したインクはほかにない」（成島氏）。ＵＶインクのように照射工程が必要ないため、生産性向上とコスト低減を実現する。「同10」はＰＰフィルムへの密着性を強化した。
現在は密着ハードルが非常に高いＰＥにも印字できるインクの開発を進めている。
同社はこれまでプリンターメーカーをコアターゲットにしてきたが、マーキングやコーディングをユーザー企業により手軽に活用してもらうため、販売店に直接提案するビジネスモデルにシフトした。「この素材に印字できるインクは作れないか」といった相談はインクメーカーにしか解決できない部分が多く、提案領域の伸びしろは十分にある。
同社は新ブランドのホームページを立ち上げ、製品の特長をＹｏｕＴｕｂｅ動画で多数紹介している。また、本社内にラボルームを新設するなどブランド戦略に注力している。
ヘッド一体型カートリッジを搭載したプリンター、吐出トラブルはカートリッジの交換だけで
復旧できる