玉ねぎの根・皮・ヘタを自動処理
洋食とともに生きる
キッチンジロー 代表取締役会長 小林 二郎氏

 都内で洋食チェーンを展開している「キッチンジロー」。野菜の調理前処理の自動化技術が急がれていた。特に多くの洋食に使われる玉ねぎは自動化処理が遅れていた野菜の1つだと小林会長は開発の発端を振り返る。「ないものは自分で作る」。根・皮・ヘタの同時カット技術に着手した。

      小林会長

 ――今年のFOOMAに大型コンベア式の玉ねぎ処理機を出展した。処理能力の大きさ、速さに圧巻した。来場者の関心も集めていた。
 小林 1時間に7200個、歩留まり85%を実現します。これまで国内には一昨年秋に八戸、昨年秋に長崎の野菜処理施設、食品加工場に導入しました。また、韓国の加工場にも採用されました。さらにアメリカでもこの大型機の導入を前提としたテスト機稼働の話が進んでいます。

 ――そもそも洋食経営ですね。
 小林 1964年(昭和39年)創業、今年で45年目です。ご存じの通り洋食には玉ねぎが欠かせません。当社はセントラルキッチンを設け、そこで野菜の調理前処理をしております。いつでも調理できる状態に仕上げておくには、あらかじめ皮をむき、茎側の端を落とし、根を取り除かなければなりません。その処理は人手では大変です。従来あった玉ねぎ自動皮むき機は根と茎側の端の処理が人手。皮むき機を導入しても本当の省力化にはなっていなかったのです。

 ――ないものは自分で作る、という発想に感心してしまう。野菜処理や洋食にかける想いは本物だ。
 小林 開発に着手してから10年以上かかってしまいましたが、成功させたいという想いは変わりませんでした。皮をむく方法はある程度目途がついていましたが、問題は根と茎側の端の処理でした。
 茎側の端は単純に切れば済むと気づきましたが、残るは根の処理です。あるとき、ドリルで取り除くという発想にたどり着きました。こうして出来上がったのがスタンダード品「玉ジロー21B型」です。人が張り付くことに変わりありませんが、作業時間が大幅に短縮。処理能力は1分間に15個なので、これまで1分間に2〜3個だったのに比べ躍進です。
 
 ――処理能力はもちろんだが、技術が凝縮している。
 小林 玉ねぎの薄皮はエアで吹き飛ばしますが、薄皮だけをきれいに剥がすにはエアの風速を上げなければなりません。しかし、風速を強くすると玉ねぎそのものが飛ばされ、素材を傷めてしまいます。これを薄皮に入れて剥がしやすくし、鼓型のローラー上で回転させながら行なうことで解決しました。

 ――このスタンダード品は各方面で活躍している。
 小林 まずは自社のセントラルキッチンで有効性を実証しました。この機種は日本はもちろん、韓国、アメリカ、ニュージーランド、オーストラリア、タイと世界各地でも実績をあげており、200台を数えています。自信を得ましたのでコンベア式の「101A型」も開発しました。これは1分間に最大60個の玉ねぎを処理できます。プレートに玉ねぎを載せるだけでよく、処理量の多いセントラルキッチンや食品加工場に売り込んでいます。

 ――FOOMAに出展した大型機の前身となる機種ですね。
 小林 101型の開発に合わせ、根を取り除く構造にも工夫を加えました。このコンベア型は軸の先端にドリルをつけるのはやめました。根を粉砕してしまうと後始末が大変だからです。代わりに、軸に2枚のカッターをつけ、軸の先端が玉ねぎに触れるとカッターが両側から根に侵入する構造になっています。カッターの先端は玉ねぎの回転軸まで達するので、軸を回転すると根を円すい状にくり抜ける仕組みです。

 ――洋食もますます楽しみだ。
 小林 都内で直営27店、フランチャイズ10店。おかげさまで多くのお客様に愛されてきております。多くがオフィス街に構えていますので、サラリーマンに多く利用されています。今までは「うまい・安い・早い」を謳ってきましたが、最近ではさらに大切なテーマを前面に押し出しています。それは『安全』、孫世代にも食べさせてあげたい洋食です。実際、私の2人の孫にもクリームコロッケを離乳食として食べさせてあげました。安心できる料理をいつまでも提供したいと思っています。

 フードエンジニアリングタイムス(FEN)2009年11月25日号掲載