早期・希望退職の募集、昨年の2倍に増加

 東京商工リサーチは「早期・希望退職」を募集した上場企業について調査した。それによると今年1〜10月末までに早期・希望退職を募集した企業は72社に上った。昨年は通年でも35件にとどまっており、今年はすでに2倍を上回った。年間で70社を超えたのは2010年以来、10年ぶりという。コロナショックが直撃した繊維・アパレルに加え、外食が短期間で急増した。

 直近の四半期を含め、赤字転落から人員削減に動いた企業が54社に上るなど「赤字リストラ」が再び増加している。

 72社のうち、新型コロナの影響を要因に挙げた企業は29社と全体の4割を占めた。業種別では繊維・アパレル、外食がそれぞれ6社で最多となった。「外出自粛、消費低迷の影響で深刻な業績不振に見舞われた企業が多い」(同社)。

 募集人数が最も多いのは日立金属の1030人、次いでレオパレス21の1000人、コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングスの900人、ファミリーマートの800人の順となった。外食業界では「いきなりステーキ」を展開するペッパーフードサービス200人、「はなの舞」を運営するチムニー100人、ロイヤルホールディングス200人など。

20〜30代もリストラの対象に

 業績別では半数以上の38社が本決算で赤字を計上した。本決算は黒字だったものの、新型コロナの影響で業績が急速に悪化し、直近四半期に赤字転落した企業も2割超の16社と多かった。これら54社が赤字決算から人員削減に踏み切った。

 近年の人員削減は年齢構成の是正を目的に45歳以上、50歳以上などと対象年齢を定めた募集が多かったが、今年は対象年齢や就業年数に関係ない募集が急増していると指摘する。「一刻も早い人件費の削減を迫られる局面にあり、対象年齢を30代や20代まで下げている」(同社)という。

 新型コロナで国内外の市場縮小は止まらず、先行きは見通せない。上限額を引き上げた雇用調整助成金の特例措置が来年も続くことが予想されるが、「不透明な終了時期への不安を払しょくするのは難しい」(同社)として、早期・希望退職によるリストラは来年も高い水準で推移するとみている。

 今回の調査は10月29日までに公表された「適時開示資料」に基づき抽出した。人員削減の実施が来年以降の企業は除いた。