コロナに負けない営業力、組織改革で磨きをかける
�螢�レオ 代表取締役社長 名倉豊夫氏
名倉社長
食品工場の容器洗浄機でシェアトップのクレオ（東京都中央区）はコロナ禍の影響を受けながらも、前12月期の売上げを前年並みに確保した。昨年２月に就任したばかりの名倉社長を先頭に潜在顧客の洗い出しと、自動化の提案を進めた営業強化が奏功した。
営業畑一筋に歩んできた名倉社長は、この勢いを駆って組織体制の改革を進める。洗浄業界ですでに認知されている技術・サービス力に加え、売る力を磨くことで売上げのトップラインを大きく伸ばす戦略を描く。
――昨年はコロナショックが多方面に及んだが、洗浄業界への影響は？
名倉 昨年３月以降、設備投資の計画が延期や取りやめになったケースが多くありました。当社も営業訪問が全くできませんでした。
私は大阪支社から東京本社に移ってきたばかりで必ずしも本社従業員全員の顔や名前を知っているわけではありません。そこで大きな会議だけでなく、小さな会議にも積極的に参加するようにしました。
当社は様々な食品関連企業と取り引きしており、メンテナンスで定期訪問する機会があります。そのため会議では「訪問した際にお客様の取引先を聞いてほしい」と指示を出しました。
――なぜそのような指示を？
名倉 ターゲットの洗い出しです。コロナ禍でも業績のいい会社はあります。特に好調なのが量販店。量販店の取引先は食肉や水産、弁当、惣菜など多岐にわたりますが、実はそうした取引先に当社の洗浄機が入っているところが多い。当社の機械をすでに導入しており、業績が好調で自動化や省人化に対する投資意欲がある。そこで、プラスチックコンテナを洗浄機に自動投入する装置や、洗浄後に自動で積み上げる装置等、洗浄機周辺装置の自動化の提案に力を入れました。
また、当社は洗浄機器と洗浄剤、全国ネットワークのメンテナンスの３つを事業の柱にしていますが、コロナの影響でサニタリーに対する意識が高まったこともあり、洗浄剤の売上げが前期比105％に伸びました。すでに洗浄機用の洗浄剤を使用している顧客に対して、工場内で使用する洗浄剤の提案を行うなど、使用箇所の拡大を図ったことも功を奏しました。
2025年は150億円以上をめざす
――前12月期の売上高は？
名倉 前年に比べて微減を見込んでいますが、売上げをほぼ前年並みにキープしたことで金融機関からは高い評価を得ました。
中期経営計画（2021〜2025年）を昨年策定し、今12月期の売上げ目標は107億円、2025年は150億円以上をめざします。
――150億円オーバーを達成するための戦略は？
名倉 まず組織体制を大きく変えます。これまでは北海道から静岡までを東日本エリアとして東京本社が統括してきました。一方、西日本は名古屋、大阪、九州に営業拠点があり、各拠点のトップがそれぞれの地域を管理していました。この手法を東日本エリアに展開します。
東北、北関東、東関東、西関東に拠点を昨年設置しました。地域密着型の営業をめざすとともに、経営管理ができる次世代の人材を育成するためです。さらに本社内に東日本事業本部を新たに立ち上げ、各拠点や事業部をバックアップする体制を敷きました。
――これまでの営業体制に忸怩たる思いがあった？
名倉 自ら営業してみせる、売ってみせるという人間が上に立たないと社員はついてきません。そのため、今回の組織改定では管理畑ではなく、営業畑の人間を各拠点のトップに配置しました。
自動化の装置は付加価値が高い
――新製品を毎年のように発表するなど、開発力が高い。
名倉 当社の洗浄機は食品工場やプロセスセンターなどに導入され、市場シェアは約６割を獲得しています。洗浄機を起点にプラスチックコンテナの自動投入、自動積み上げ装置などを開発していますが、自動化の装置は付加価値が高く、今後はこの技術の用途開発も進めたいと考えています。
実際、物流分野では商品を載せた番重の積み上げから台車への移載までを自動化した実績があります。意外なところでは、洗浄機の仕組みを応用して冷凍畜肉の解凍機を作ったこともあります。
こうした可能性を持ちながら、従来は導入事例を全社で共有することがなかった。この点を改善し、営業交流会を定期的に開催して情報を共有し提案力を高めています。
――洗浄脱水機以外では「炭酸次亜水生成システム」が主力商品に育っている。
名倉 野菜洗浄のマーケットは徐々に獲得しつつあり、さらに売上げを伸ばすためには用途開発を進める必要があります。昨年はコロナの影響で大きな展示会が開かれませんでしたが、今年は積極的に出展して新たなニーズを探ります。
野菜を原体のまま炭酸次亜水と野菜洗浄剤に浸漬して洗浄殺菌する「野菜原体浸漬殺菌機」や、カットした野菜を傷めずに洗う「流水式野菜洗浄機」も出品して、コンビニベンダーやカット野菜工場向けに提案を強化します。
さらに今年の「スーパーマーケット・トレードショー2021」（２月17〜19日、千葉・幕張メッセ）、「国際物流総合展」（３月９〜12日、愛知県国際展示場）では、意欲的な新製品をそれぞれ発表します。いずれも新たな試みに挑戦しています。ぜひ期待してください。
（なぐら・とよお）1961年大阪府生まれ。1985年クレオ入社。大阪、東京で営業に従事した後、1991年名古屋営業所の立ち上げに携わり、初代所長。2008年大阪事業部長、2013年取締役。名古屋事業部、大阪事業部、九州事業部を統括。2020年２月社長就任。入社当時、十分な営業カタログがなかった時代、手作りのパンフレットを持ち歩いたり、トラックに洗浄機を積んで自ら運転し、営業先を回るなどして取引先を広げてきた。その頃作った営業マニュアルは現在も社員教育用に使われている。近畿大学商経学部卒、59歳。