原料処理から加工まで一貫生産の巨艦
ニチレイフーズ・タイ／ＧＦＮ新工場
タイに完成したＧＦＮ新工場は、ニチレイフーズがタイのチキン大手グループＧＦＰＴと合弁で設立した鶏肉加工の超大型生産拠点。８月末に完成し、農水省の対日輸入許可を待って生産準備を進めているところ。既にタイ国政府畜産局の製造許可は認可されており、日本の農水省の現地監査も終えている。
敷地23万2000�屐別鵤桂�坪）は東京ドーム５個分に相当する。幹線道路に面し一片の直線がほぼ１kmという広大さは圧倒的。この中に、第１工事で生鶏（ライブバード）から原料処理する「スローターハウス」（1万7600�屐¬�5300坪）と調理加工場（２万3000平方ｍ、約7000坪）を建設した。しかも、２つの工場は外気に触れない｢スロータートンネル」（約30ｍ）で連結しており、原料から加工、製品まで完全一貫（フルインテグレーション）の生産システムとしているのが最大の特徴。
チキン産業が盛んなタイでは、一部でフルインテグレーションシステムを導入しているところもあるが、小規模。大半はスローターハウスと加工工場の機能を分離している。大型規模で、同一敷地の中に、同じ屋根の下でフルインテグレーション機能を持った工場は同社が初めて、という。
ＧＦＮの原料処理工場（スローターハウス）、圧倒的な広さが印象的
フライ＋オーブンが２ライン、ツインオーブンなど最新機器を採用
ＧＦＮの工場には第１期工事でフライ＋オーブンの２ラインを設置した。生産加工の各工程には世界中から最新の機器・設備を導入。また加工場内はスペースにゆとりを持たせ、新しいオーダー（カスタマイズ商品）等にも柔軟に対応できることを重視した。
スローターハウスで生鶏肉から部位カットし加工工場に搬入した原料鶏は、調味液等を合わせるタンブリング、粉付け、バッター付けなどを経て加熱工程に。前処理工程は２ラインそれぞれ２セットに完全に独立させている。これによりアレルゲン、ＤＮＡなどを完全に分離し、コンタミをなくしてトレース管理する。
前処理工程では製品の品質を均一化するため、様々な工夫を加えた。粉付け作業では粉玉ができやすく、洗浄がしにくい工程。バッター液の品質も変化しやすいため、付着状態にばらつきが出やすい。それをニチレイＦの技術と現地技術陣の改善の取り組み成果でクリアし、長時間同じ条件で仕上げることができた、という。
ＧＦＮのフライヤー
加熱工程は２ラインともフライ＋オーブン。
フライヤーは日本製（アサヒ装設）。油槽を浅くすることで調理温度のコントロールを容易にした。フライ油には最新技術を持ったフィルターを採用することで、揚げ油の品質劣化を抑制している。オーブンは２つのオーブンの加熱条件を相互に細かく設定できるツインタワーオーブン（豪州製）を採用した。この機種をアジアで導入したのはこれが初めて、という。
フリーザーは自動霜取り機能を備えた新型機（ジャイロコンパクトＳＤ、スウェーデン製）を採用した。冷気の送付部分が３分割してあり、デフロスト時間をそれぞれずらすことで連続操業できる。１週間単位で連続生産するような大型食品工場に適している。日本の食品工場では１日の作業シフトにサニタリー（清掃）を組み込んでおり、連続してフリーザーを動かすようなことはないので、この機種の導入例はない。超大型工場でチキン専用に生産するＧＦＮだからこそできる機種の選定といえる。
作業場の空調冷却には夜間電力で製氷した氷を利用し、電力コストを抑制。加熱工程などの高温作業ポイントにはスポットクーラーを配置し従業員の負担を軽減している。
加熱済製品は凍結し、Ｘ線、金属探知機、計量を経て包装する。
「細かい様々な要望にも対処できる」ように作業スペースはゆとりのある設計とした。
原料処理のスローターハウスと加工工場の２棟を合わせ、建物は直線で約530ｍ、幅85ｍ。この中に直線で約500ｍの見学者通路を設けた。見学者通路の一端に立つと、先はかすんで見えない。少し先の通路は暗い。しかし、移動すると人間の動きをセンサーがキャッチし、自動的に照明がつく。通り過ぎた後の照明は当然、自然消灯する。
敷地内には作業、製造加工関連棟のほかに、９棟の従業員用高層型宿舎や、銀行、売店などのユーティリティ施設も完備する。
ツインタワーオーブン
１日10〜12万羽処理、年間生産能力は２万ｔ以上
ニチレイフーズがタイに新設したＧＦＮの工場概要は次の通り。
◆社名 ＧＦＰＴ Nichirei(Thailand)Co.,Ltd＝ＧＦＮ
◆所在地 タイ国チョンブリ（Chon Buri）県ノイヤイ（Nong Yai）＝バンコクから東南東約130km、車で約１時間半
◆設立 2008年11月27日
◆事業内容 鶏肉処理・非加熱鶏肉製品（主にタイ国内）の販売、鶏肉加熱加工品の製造と販売（日本向け）
◆資本金 11億7000万バーツ（約32億7600万円＝１バーツ2.8円換算）
◆出資比率 ニチレイフーズ51％、ＧＦＰＴ49％
◆役員 会長兼社長＝ジェサダ・シリモンコルカセム、副会長兼上級副社長＝柴和之、取締役副社長＝高柳誓之、同＝タラドール・バホーリョディン、取締役（非常勤）＝アナン・シリモンコルカセム（ＧＦＰＴ社長）、同＝加藤直二（ニチレイフーズ常務執行役員企画本部長）
◆敷地 23万2000�屐別鵤桂�坪、東京ドーム５個分）、幹線道路に面し約１km
◆建物 スローターハウス1万7600�屐別�5300坪）、加工場２万3000�屐別�7000坪）、２棟を合わせて長さ約530ｍの直線
◆予定生産能力 処理毎日10万〜12万羽、加熱加工場月間1800ｔ＝年間約２万1600ｔ
◆生産設備 フライ＋オーブン／各２ライン、他に３ラインの拡張余地あり
◆生産可能製品 フライドチキン、鶏唐揚げ・竜田揚げ、あぶり焼き、チキンステーキ、その他チキンフライ類、チキン焼き物製品