米飯専用工場で活躍する“おむすび”成形機用洗浄機
課題克服できる設備には積極投資

 弁当やおむすび、寿司などを製造するファーストフーズは八王子工場(東京都八王子市)に“おむすび”成形機部品用の新型洗浄機(クレオ製)を導入、手洗いに比べ作業時間をおよそ半減することに成功した。使用水の節約にもつなげている。

矢澤営業本部長(右)と小島品質管理部長

 「私たちのような工場では、働いてくれる人を集めるのに大変苦労しています」。そう打ち明けるのは同社の矢澤茂徳常務取締役営業本部長。同社は八王子工場のほか、武蔵工場(埼玉県入間市)、沼津工場(静岡県沼津市)、習志野工場(千葉県習志野市)、福島工場(福島県本宮市)の計5工場を構え、東日本を中心に、大手コンビニエンスストア向けに日配商品を提供している。
 他の4工場と違い、八王子工場は米飯商品に特化した専用工場で、多いときには日産15万食を生産する。同社の主力工場の地位にある。
 だが、人集めには非常に苦労しているという。工場は都内にあり、周辺には多くの住民が住んでいるのだが、働き口もそれだけ数多く存在している。募集しても、他産業の工場に流れてしまう傾向が、近年特に強くなっているという。
主婦など、パートタイマーが集まりにくければ、派遣社員に頼らざるを得ない。しかし、それでは人件費が数割増しとなる。何より、入れ替わりが激しい派遣社員では、教育しようにもすぐに人が変わってしまい、衛生的に万全を期したい食品工場としては、なるべく避けたいのが本音。冒頭の矢澤本部長の言葉も切実な思いから発せられたのだと感じざるを得ない。

 人が集まりにくいのならば、それを克服できる設備には積極的に投資する――。同社はそう明言する。そこで出会ったのが、洗浄機メーカーのクレオが今年開発したおむすび成形機部品用の新型洗浄機だった。
 同機は洗浄液を噴射するノズルを洗浄室内の上下と、左右に配置している。従来機は上下に付けた噴射ノズルを移動させていたが、新型機は噴射ノズルを固定し、洗う部品を載せる台を回転させる仕組みにした。
 三角形や円形で凹凸の多いおむすびの型は使用後、米粒がこびりついて落ちにくく、手作業で洗浄するのが一般的だった。新開発した洗浄機は洗浄液を噴射するノズルの角度が増えたため、洗いムラが減る。殺菌水のポンプをオプションで追加すれば、洗浄から殺菌まで自動で切り替えて運転することもできる。

導入した“おむすび”成形機用洗浄機

成型機の各部品を機内に入れたイメージ、凹凸の多い型でも、すばやく洗い落とせる

 この機械は試作機の段階から同工場で試用した。言わばその完成は八王子工場とともにあるというものだった。
 「まず、自動化に求めたのが手作業と同じように洗えるということ。そこはクリアできています」と同社の小島敬一品質管理部長。「導入していく過程で気づいたことは、手作業の洗浄は人によってばらつきもあること。それを機械化することで、ばらつきなく、一定のレベルで洗浄が保てれば、と願っていました。それもクリアできています」と、洗浄機の性能を評価している。

時間も水の使用量も減らせる

 決め手はまだある。手洗いの場合、部品を洗浄液や殺菌水につけ込む必要があったが、その工程が省けるため作業時間は約4割短縮できる。水の使用量も約6割減らせるという。「工場のある東京都は上下水で水道代がかかり、懸念材料の1つでした。米飯工場は水を多く使用します。そこを軽減できるのはかなり大きい」という。
 もちろん働くスタッフにとってもありがたい。成型機の型(円盤状)は重さもかなりある。女性の手で取り外し、シンク台に運び、それを抱えて洗浄するのにも苦労することが多かった。その点を解消できること自体、働きやすい環境づくりに貢献している。
 専用のカートで円形のラックをそのまま洗浄機に横付して、スライドさせて投入・取り出しできることによる部品を移し替える手間や工程も改善されている。

 販売先のCVSは、おむすびの特売キャンペーンを11月の1カ月間実施した。八王子工場のおむすび成形機は8台、期間中フルに稼働し、生産増大に応じた。成形機が活躍すればその洗浄機も活躍する。「このキャンペーンの時期に相まって、洗浄機も本格稼働しましたが、充分に働いてくれました」と、2人は笑みを浮かべる。
 課題を克服できる設備には積極的に投資する――、という通り、2014年には武蔵工場にも洗浄機を導入する予定という。

 ※同社では、取引先のこだわりで、「おにぎり」の名称ではギュッと握ってしまうイメージがあるため、ふっくらとした感じになるように「おむすび」と呼んでいる。

キャンペーン中は特に稼働率が上がったおむすび成形機

 フードエンジニアリングタイムス(FEN)2014年1月8日号掲載