水産加工のノウハウが財産
「他社にできないことを」
合食 八戸工場
高村工場長
合食の八戸工場（青森県八戸市、高村丈治工場長）は合食グループで冷凍食品を生産している唯一の生産拠点。日本有数の水揚げを誇る八戸港に近接していることが特色の一つだが、近年は漁獲量が減少していることから前浜の原料はほとんど使わなくなった。しかし、水産加工のＤＮＡは健在で、焼く、煮る、練る、乾燥など多様な加工技術を持つ。近年の包装形態の多様化に対応した包装設備による多品種対応も特徴の一つ。長年の水産加工ノウハウにより、他社がまねできない差別化商品を生産している
代表的な商品は「あじ竜田揚げのあんかけ」。あんかけ商品は切身の形を崩さないことが難しいポイントだが、同工場ではこの商品を11年作り続けており、当初80％だった歩留まりを今では98％にまで高めている。こうした長年の経験が貴重なノウハウと言える。
一般的に、いかの竜田揚げは衣がはがれやすく作りにくいが、同社はマリネ―ション等の工夫できれいに衣を結着させている。同商品は生協向けが多い。
多様な包装形態に対応
子持ちシシャモに磯辺の衣を付けたフリッターは主に学校給食向けの商品。シシャモは特に形が崩れやすい原料だが、コンベアのつなぎ部分の角度や方向に試行錯誤を重ね、きれいに仕上がるようになっている。
焼きシシャモは中国で味付け・乾燥したものを同工場で焼き、トレーをシュリンク包装してＣＶＳで良く売られているおつまみ商品にしている。
ほとんどのＣＶＳで売っている「いかの明太子焼き」も同社の技術で明太子の「粒感」を活かしている。明太子をいかに付けるタイミングがノウハウの一つ。コンピュータスケールで計量し、トップシール包装をしている。
近年はＣＶＳ向け商品が多く、トップシールのラインは昨年１ライン増やして２ライン体制になっているが、ほぼフル稼働になっているという。
さんまをフライにしてかば焼き風に仕上げる商品は、さんまを調味液につけた後に粉をまぶし、フライした後に軽く焼き上げることで風味を高めている。こうした魚加工技術のＤＮＡは枚挙にいとまがない。
魚とタレの豊富な組み合わせができ、エビチリのような中華も作ることができる。最近はブイヤベースも手掛けている。
このほか、魚の骨まで柔らかくするクッカー（圧力釜）なども備えており、魚加工品ならなんでもできてしまうのではないかと思えるほど。
「他社にできないことが当社の強み。たれも自社で作っている」（高村工場長）という。
生産アイテム数は100近い。生産している商品は包装形態こそ多種多様だが、ほぼすべてが冷凍して出荷している。ＣＶＳ向けフロチル商品が多いためで、冷凍食品に限れば全生産量の３割ほど。水産フライ品などは大手冷食メーカーのＯＥＭが少なくない。
衣を均一に薄く付ける作業にもノウハウがある
ししゃもがくっつかないようにきれいに整列
前浜の水揚げ減少、加工度高める
八戸工場
同工場は平成８年に八戸市の冷食メーカーから譲り受け、合食フローズンとして新たなスタートを切った。24年グループの経営統合で合食八戸工場となった。
以前は焼きいか類がメイン商品だったが、水揚量の減少で現在は10年前の３分の１ほどに減った。タレ付け商品やスープ、ブイヤベースなど加工度を高めているのは付加価値向上のためでもある。
従業員は38名だが、パートナーと呼ぶ従業員83名と、海外研修生18名が生産に従事している。
人手不足は八戸市でも起きている。
「機械化・ロボット化を進め、あとは作業改善だろう。改善は10年程継続して実施している」（高村工場長）という。
工場は第１工場と、20年に増設した第２工場があり、第２工場は焼きラインを設置している。生産能力は最大で月産400ｔほど。現状では月産200ｔほどを生産している。
管理面ではＩＳＯ22000、ＦＳＳＣ22000を取得済み。
「昨年事業を立ち上げたアメリカの販売拠点、合食ＵＳＡ（サンフランシスコ、設立は2017年４月）を通じた海外輸出も検討している」（清原悦郎執行役員食品事業部加工水産ビジネスユニットリーダー兼商品部長）という。
同工場ではグループの食品開発も手掛けている。
合食八戸工場の概要
▽敷地6712�屏Ψ�築面積／第１工場1401�屐�第２工場2148�屏�生産ライン／フライヤーライン３、パン粉付け製品ライン１、焼き物ライン１、低温乾燥ライン１の計７ライン
▽主要設備／トンネルフリーザー１基、給袋自動包装ライン１、ＭＰＯオーブンライン１、深絞り自動真空包装機１基、ガス置換深絞り自動真空包装機１基、ガス置換トレーシール機２基など