単一素材の食品搬送ベルト、販路拡大
ボルタベルティングジャパン 取締役社長 田口 敏晴氏

 ボルタベルティングジャパンは単一素材のベルトを得意としている専門メーカー。切断抵抗や耐摩耗性に優れているため、細菌が繁殖するキズや裂け目がつきにくく、清掃も簡単な点が強み。テクニカルサポート体制が整い、本格的な販路拡大に乗り出す。

      田口社長

 ――食品搬送用ベルトで世界中に多くの採用実績を持つボルタベルティングテクノロジー社(本社イスラエル)の日本代理店として立ち上がった。
 田口 私は食肉加工機械やコンベアの輸入にこれまで携わってきましたが、お付き合いしているユーザーは食肉だけでなく、マグロなどを処理している加工場が大半でした。そこでは素材を生のまま運ぶことが多く、衛生面に特に気を配らなければなりませんでした。そこで、食品の搬送でユーザーを支援できるものはないか――と海外の食品機械市場を見て回ったところ、アメリカの展示会でボルタの単層ベルトに出会いました。これは日本のユーザーに受け入れられると確信し、3年前に会社を設立。以来、ヨーロッパを中心に世界中で培ってきたベルト技術を日本のユーザーに提供するネットワーク窓口となっています。

 ――単一素材のベルトであることを強く推している。
 田口 国内で広く使用されているコンベアベルトの大半は繊維の芯材の上に樹脂がコーティングされているものです。このため接合に特殊技術と設備が必要であり、設置までに時間がかかりますが、ボルタ製のベルトはポリマー単一素材のため専門ツールで容易にヒートシール接合(エンドレス加工)ができ、簡単に取り付けられます。

 ――簡単な設置は現場にとってありがたい。
 田口 ほとんどのベルト幅の場合、1人で安全に取り扱うことができ、ベルト取り付けに必要な時間とコストを削減できます。コンベアを短時間で復帰することが、無駄な停止時間を減らします。工具類も誰でも簡単に使用できます。

 ――単層ベルトの利点は他には?
 田口 表面が多孔質だった従来品と比べて、表面の平滑性に優れ、油脂や細菌が溜まりにくく、洗浄も容易です。餅など粘着質の食品に対する剥離性に優れているタイプもあります。
 また、従来品は積層構成のため劣化によって表面にひび割れが起きたり、芯材の繊維がほつれて異物として製品に混入する懸念がありましたが、単一素材のベルトはこれらの問題を解消し、ベルトへの色移りや浸透も起こらないよう配慮しています。

 ――ベルトの劣化による事故はユーザーにとって深刻だ。
 田口 食材によっては鋭利な骨がベルト表面に多くの傷を残し、そこが細菌の発生する原因ともなりかねません。その点でも、均質な素材のため切断抵抗に優れ、傷ついた場合の復旧も容易です。

エンドレス加工は突き合わせ溶着を行なう。ベルトを溶着するにはFBW溶着機やFT溶着機を使えば簡単に溶着できる。従来のような大掛かりな装置は必要ない

テクニカルサポート充実、用途に合ったベルトを提案
営業部長  野田 常雄氏

 ボルタの単層ベルトは様々な加工性に富むのも強み。表面に取り付ける桟やサイドウォール、裏ガイドなどの加工材料はベルトと同素材のため、溶着による加工が可能になり、高強度で長時間使用できる。
 穴あけ加工や山型の溶着ガイドも可能で、急速冷凍機も通過できる。肉や魚の処理に強いが、ポテトの加工やチーズの処理、キャンディの製造工場にも採用されている。
 田口社長を支え、日本のユーザーとの最前線に立ち、全国を走る営業部の野田常雄部長に今後の戦略を語ってもらった。

      野田部長

 野田 会社設立からこの2年間は日本のユーザーに適合できるかどうかなど、市場調査を重ねてきました。テクニカルサポート体制が確立していないと、ベルト自体が優れていても、何かが起きた際にユーザーを戸惑わせるだけになると実感しています。ベルトを売ることだけを優先的に追い求めては厳しくなります。

 ――そのサポート体制が整ったわけだ。いよいよ今期は本格的に販売展開を仕掛けていく。
 野田 ベルトは万能ではなく、全ての用途でOKというわけではありません。ボルタの単層ベルトはマイナスの温度帯には強いのですが、80℃以上の高温度は弱い部分があり、湯がかかる製造ラインではベルトが伸びてしまいます。用途が不適切な場合にはその旨をユーザーにはっきりと伝えることが、ベルトを扱う私たちにとって大切な姿勢でしょう。ボルタの力が発揮できるところに最良のものを提案し、製造現場を支援していきたいと思います。一番危険なことはベルトの1人歩きです。説明なきところに最良のものは生み出せません。

 ――日本でもベルトに対する理解が年々高まっている。
 野田 異物混入はユーザーが敏感になるもの。その点、ボルタ製は高密度な素材により、水や油を吸収せず、常に清潔な状態を維持できます。また、表面の剥がれ、繊維の露出などがなく、異物混入のリスクが軽減できます。興味を持っていただいたユーザーの中にはグループ工場でも採用を検討している、というように、手応えを非常に感じています。

今年のFOOMAに出展し、多くの来場者の関心を集めた

 フードエンジニアリングタイムス(FEN) 2010年7月7日号掲載