森永乳業の微酸性電解水「ピュアスター」は塩素臭のしない塩素系殺菌剤として食品工場で注目されている。機器類や床の洗浄、ラインスタッフの手洗い、さらに食材の殺菌洗浄にも対応。「水道水と同じ感覚で使用できる」という強みを前面に押し出している。
同社の微酸性電解水は塩酸を電気分解してできる次亜塩素酸を水で薄めて生成する。食中毒の原因となる大腸菌などの細菌やノロウィルスに対する殺菌効果が確認されている。2002年には厚生労働省から殺菌目的で使う食品添加物として認められた。
流水で洗うような感覚で食品や生産設備を洗浄、殺菌できる。大量の水ですすぐ必要がなく、コスト面の利点もある。
小室ピュアスター営業部長
――食品工場を訪問すると、ピュアスターを導入しているケースがここ最近多くなった。
小室 もともとは森永乳業の工場で使っていたものが発祥です。社内での使用を経て、ある程度効果が安定してきたので、97年頃から外販を開始しました。当初はグループの森永エンジニアリングがユーザーとの窓口となり、当社生産部の担当者がその調整役を担当していましたが、2010年に社内に専門の営業部を設置しました。
――直接の販売が可能となった。
小室 この3年間でユーザーに直接働きかけ、販売を強化してきました。今までは森永エンジニアリングが窓口だったため、エンドユーザーの状況が我々のもとになかなか入りづらかったんですが、専門の営業部を設置したことはかなり意義がありました。どう提案すればよいか、あるいはユーザーは今何を望んでいるのかなどを見聞きしながら、営業活動に取り組んでいます。
――営業部のスタッフの数は増えた?
小室 実績も出始め、活動量も増えてきましたので、この2月に1名増員し、6名体制で臨んでいます。一方、森永エンジニアリングでもプラント技術部やシステムコントロール部などいくつか事業部がありますが、ピュアスター部には8名います。彼らとの連携を強固にして、今まで以上にユーザーに働きかけています。
――どの業種の食品工場に多く導入されている?
小室 一番多いのは、我々と悩みが共通するところ、つまり乳業、飲料メーカーが多いですね。塩素臭や排水の部分で現場の改善を求めています。次いで、食品加工メーカーにも大型機が導入されています。
――乳業メーカーといえば競合相手だ。
小室 同じ業界に身を置く者として、工場が抱えている事情は同じですし、ノウハウが知られてしまうと懸念するよりも、工場改善という、その先にあることにメリットを感じて受け入れているようです。
ピュアスターの導入はベンダー工場やカット野菜工場にも進んでいる。例えば、記者が取材した大手コンビニのベンダー工場では、野菜洗浄設備にピュアスターを組み込み、エアーバブリングを使用せず、水流ポンプで洗浄することにより、殺菌効果を上げるとともに、野菜を傷めずに洗浄している。
また、この工場では野菜の洗浄だけでなく、スライスの工程でもピュアスターを流しながら行なっている。殺菌効果だけでなく、機械の摩擦熱を抑えて野菜が傷むのを防いでいる。工場スタッフの手洗いや厨房設備の外装殺菌、清掃にも活用していた。
「ピュアスターの活用で食材の幅も広がった」と工場長は喜んでいた。扱いにくいと敬遠されがちだったパクチーも商品の中に取り込むことに挑戦、他社製品の消費期限が1日であるのに対し、同社の製品は2日に引き延ばすことも可能となった。
――今後の展望は。
小室 基本的に同じ事業方針でいきますが、知名度をもっと上げていく必要があります。この3年で多少なりともピュアスターの知名度は上がっていますが、まだまだです。食品工場の衛生管理はどこもしっかりしています。そのうえでピュアスターを検討するとなると、少なからずコストアップとなります。導入には経営トップの意識に働きかけなければなりませんが、その投資に見合う、いや、それ以上の効果が得られることを訴えていきます。
――啓発する場はどこになる?
小室 動画サイトで導入事例を配信するなど、営業部を設けて以降はWEBを使った情報発信を充実させました。FOOMA(国際食品工業展)への出展やセミナーの開催などユーザーとの接点も活用していきます。