NPO法人カビ相談センター(高鳥浩介理事長)は「10周年記念講演会」を東京大学の弥生講堂で6月30日開催した。
同センターが専門家を招き毎年行っている講演会で、10回目。カビに関わる研究者ら9名が様々な話題を提供した。食品製造事業者、大学・研究機関関係者ら約160名が参加した。
関係者ら約160名が聴講した
中央設備エンジニアリングの野々村和英エンジニアリング本部長は「カビ対策を考慮した施設設計と環境維持」のテーマで講演した。
フードチェーン全体を通して食品安全を管理し、品質システムを改善するための認証プログラムであるSQFのコンサルタントでもある野々村本部長は、温度、湿度共に高い食品工場内はカビの格好の生育環境になっていることを指摘。工場内でカビが発生しやすい場所を具体的に例示し、4つの対策「侵入させない」、「発生させない」、「拡散させない」、「除去する」について解説した。
「侵入させない」では汚染空気を侵入させない、原料・資材の外装を清潔区に持ち込まない、作業員を介して侵入させないに着目。粉塵・土ぼこりを除去できる中性能フィルターを設ける、入出荷口にドックシェルター類を採用し、内部を陽圧にする、開梱室を設ける、私服と作業着は出来るだけ離すなどの対策を説明した。
「発生させない」では結露させない、室内水分・残渣を少なくするに着目。清潔作業区の室内は必ず陽圧に保ち、汚染区・天井からの空気侵入を防止する、加熱機器の換気を適切に行う、適切な床勾配を設ける、壁と床の入隅を掃除しやすくするなどの対策をあげた。
「拡散させない」ではプロセス自体で拡散させない、動線で拡散させない、空気で拡散させないに着目し、洗いやすいフリーザーを導入する、汚染区から清潔区への物の流れを一方通行にするなど対策を示した。
「除去する」では除菌剤の空間噴霧について具体的なデータを示し、有効性をアピールした。
最後に「空気は食品の副原料。最良の空気質で食の安全・安心は確保できる」と指摘した。
その他、カビ毒とカビ毒汚染除去について、カビとアレルギー性疾患、微生物を制御する次亜塩素酸の先進的活用技術、小売り・流通で発生しているカビ発生事故の事例報告――などについて講演した。