復興庁は「被災地での55の挑戦―企業による復興事業事例集 Vol.2―」を4月22日公表した。東日本大震災で被災した企業が直面した、課題の克服に取り組んだ事例を参考に、今後、被災地において多くの事業が動き出すことにより、産業の復興加速を促すのが狙い。
事例集では被災地における産業の課題を「いかに販路を開拓し、いかに売上げを回復させるか」と指摘。昨年6月に東北経済産業局が実施したグループ補助金交付先へのアンケートによると、震災直前の水準以上まで売上げが回復したと回答した企業は36.6%とまだ少ない。とりわけ水産・食品加工業の割合が14.0%と低水準にとどまっている。
現在の経営課題については「人材の確保・育成」が57.6%、「販路の確保・開拓」が48.3%となった。被災地においては水産加工業をはじめとする食品製造業が従業員数、製造品出荷額ともに製造業の中でトップを占めており、事例集では、これら企業の売上げ回復が被災地の産業復興の要であることを強調している。
課題に対してどの企業も共通して取り組んでいるのが「新しい商品・サービスの開発」、「ブランドの構築」、「新たな販路開拓」。また、被災地企業の多くが震災前まで受注生産を主軸としてきたが、震災を契機に失った販路を、消費者への直接販売へ転換することで回復に取り組む姿勢がうかがえる。今回の事例集では、小規模に行われていたこれらの取り組みが、地域単位さらには地域における業界再編の動きにまで進化しつつあることを示している。
事例として(1)相馬双葉漁協(福島県相馬市)(2)高政(宮城県女川町)(3)阿部長商店(宮城県気仙沼市)(4)小野食品(岩手県釜石市)(5)北三陸天然市場(岩手県久慈市)(6)久慈市漁協(岩手県久慈市)(7)マルキン(宮城県女川町)(8)三陸とれたて市場(岩手県大船渡市)(9)山徳平塚水産(宮城県石巻市)(10)ADBOAT JAPAN(岩手県盛岡市)(11)ナカショク(岩手県大槌町)(12)井戸商店(岩手県釜石市)(13)山岸冷蔵(岩手県大船渡市)――などの取り組みを水産関係として取り上げている。