野口正見の「5S活動による食品工場改善」 −21−
中堅メーカー(食肉のパン粉付け商品がメイン)の5S推進運動

 コンサルタントとして指導した会社の5S活動で、印象に残った2社のエピソードを紹介する。両方とも中堅の食品会社。
 1つは食肉のパン粉付け商品がメインの会社で、本社工場、車で10分弱の近くにある第2工場、地方にあるもう1つの工場という生産体制だった。
 製品はほとんど業務用として販売していた。本社工場は最も古く、老朽化しており、近い将来建て替えの方向を計画していた。社長からは生産性の向上を目指して工場全体のレベルアップ、老朽化した本社工場のリニューアルを指導してもらいたいという要請を受けた。
 本社工場と第2工場を視察すると、5S活動が全く実施されていなかった。そこで社長に現状を説明し、筆者が千葉畜産工業で実践した「生産第一」から「品質重視」、「安全・安心な商品作り」に威力を発揮した5S活動を切り口にすることを提案した。
 この考えを理解し、5S活動を通じて全体の職場を清潔で整頓された状態に維持し、ムダなことを省き、従業員の自主的創造力を引き出し、生産性の向上を獲得する方向付けとした。
 実行機関として、社長は5S委員会を組織し、自ら委員長になり、実務は常務取締役生産部長を副委員長に、取締役商品開発部長を事務局長に任命し、書記、本社工場長、第2工場長、各職場(9チーム)7人の代表で委員会を構成した。上から下まで組織を挙げて取り組むことになった。
 地方の工場も、工場長を委員長にして副委員長、事務局、5チーム5人の代表が任命された。それぞれ社長より辞令が渡された。