残業時間を半減、浮いた原資を社員に還元
�螢魁璽廛妊螢丱蝓次‖緝充萃�役社長 花村省吾氏
生活協同組合ユーコープの子会社で、神奈川県内にある４カ所の物流センターを運営する�螢魁璽廛妊螢丱蝓�（本社座間市）は３年以内に残業をゼロにする目標を掲げた。１年目の昨年度は55％の削減に成功。浮いた原資は社員に還元した一方、過去最高の売上げ、経常利益を更新した。
花村社長
――残業ゼロの取り組みについて聞きたい。
花村 物流・倉庫業界は残業が当たり前の世界。当社はこれまで年間1200万〜1400万円の残業代を支払っていました。これを固定費と考え、残業予算に対して減らした分は事業所単位で均等に分配しました。そのため、労働時間が減っても給料は下がりません。昨年度は１人当たりの平均残業時間を前年度の月16.7時間から7.7時間に減らし、500万円超の残業代を削減。１人当たり約17.5万円を還元しました。
――どうやって？
花村 すべての業務を図式化し、この業務は誰と誰ができるのか、といった具合に“業務の棚卸”をしました。１つの業務を最低でも２人、できれば３人ができるようにして多能工化を進め、この人でなければできない、という仕事をなくしました。「当日在庫修正」、「不良データ集計」、「追加発注」などの業務内容をボードに張り出し、社員１人ひとりが何時から何時までどういった業務をこなさなければならないのかが一目で分かるため、退勤時間を超えそうな場合、他の人に代わってもらうことができます。
このように仕事の「始め」と「終わり」を意識して働くことで、定時で退勤できるようにしたほか、有給休暇の完全消化も実践しました。昨年度は社員39名の６割が５連休を取得し、「家族に喜ばれた」とうれしい反応が返ってきました。５連休は取得できなくても、４連休や、２連休と３連休を組み合わせて取得した社員もいます。
「仕事と生活の調和」をめざす
――成功の秘訣は？
花村 そもそも残業ゼロは目的ではなく、原資を効率よく社員に還元し、仕事と生活の調和を図るのが目的です。私生活が充実することで仕事がうまく進み、仕事がうまくいくことで私生活も潤うという「仕事と生活の相乗効果」をめざしているわけで、これを「ワークライフシナジー」と呼んでいます。
上から「残業を減らしなさい」とだけ言って個人任せにしていては成功しないでしょう。
自分たちの会社は自分たちでデザインするように働きかけ、所長をリーダーに、主任や班長らでプロジェクトチームを作りました。チームから出た多岐に渡る提案は、会社、チーム、個人のいずれかで実践するものに振り分けました。例えば、納品の締め時間を少し繰り上げて無駄をなくしたいという提案は、ユーコープとの調整が必要なので会社が受け持ち、定時で退勤するための改善はチームで取り組まければなりません。個人では、集中力が必要な伝票整理など誰にも話しかけてほしくない時に「がんばるタイム」を１人１日１〜２時間ほど設定することができます。その間は電話に出なくても構いません。
こうしたさまざまな取り組みを積み重ねた結果、残業を減らすことができました。初年度で55％の削減はほぼねらい通りです。３年以内に平常時での定時退社を指す残業ゼロは可能でしょう。
今年度はパートリーダーも定時に退社できるようにし、浮いた原資を還元して一定の収入が得られるようにします。20名のパートリーダーに話を聞くと、シフトを組む作業の負担が大きいことが分かったため、1000万円かけて自動で人員配置するシステムを導入しました。テストランではほぼ問題がないので、近々本格導入します。
――現状の課題は？
花村 社員とパートタイマーのコミュニケーションですかね。社員はきちんとコミュニケーションを取っているつもりでも、パートタイマーは必要な情報が伝わってこない、意見・要望に対する答えがない、と感じているケースがあり、ある種の壁があります。
そこで、パートタイマーからの意見・要望を紙に書いて提出してもらい、受け取った社員がそれをイントラネットに入力し、全社員が共有するという“見える化”を図っています。意見をメールではなく、紙に書いて手渡してもらうのがポイントで、そこでコミュニケーションが生まれます。
――人手不足は業界共通の課題だ。
花村 昨年、「いつでもワーク」という取り組みを開始しました。決まった曜日や時間に働けない人が40名ほど登録しています。レギュラーのシフトに欠員が出た場合、登録したメンバーに連絡すると、９割は埋まります。
今は手作業で入力しているため登録を40名に制限していますが、開発中のアプリを使えば100名以上に対応できます。ただし、たまにしか勤務しないので作業手順を忘れてしまいがちです。そこで仕事の内容を動画にして「Ｙｏｕ Ｔｕｂｅ」にアップし、事前に予習してもらう取り組みを準備しています。動画の撮影は社員が楽しみながらやってくれています。