工場のエア漏れどこから? 超音波で瞬時に検知

 電子計測器・食品検査機メーカー大手のアンリツ(神奈川県厚木市)は配管のエア漏れを自動で検知する超音波方式の産業用音響カメラ「FLIR Si124」を食品工場向けに提案している。電気設備の部分放電にも対応する。独自のコスト計算機能を内蔵しており、年間でどれぐらいの光熱費削減につながるかを見える化することもできる。

 このほど都内で開催された「FOOD展2022」で実演し、省エネやコスト削減に敏感な食品事業者らの注目を集めた。

産業用音響カメラ「FLIR Si124」のディスプレイ画面、漏えいカ所と漏えい量がひと目
でわかるほか、どれだけムダなコスト(右上)が発生しているかもリアルタイムで把握できる

 赤外線サーモグラフィのトップメーカー、米国TELEDYNE FLIR社製。高感度マイクロフォンを業界最多の124個搭載しており、エア漏れのカ所から生じる超音波を正確に検出する。検出性能は静音時(距離0.3m)で1分間あたり0.016L、検出距離は最大130mと高い。

 騒音にも強い。検知に最適な周波数は環境によって異なるが、今回の新製品はAIがターゲットノイズだけを判別して測定する。

 カメラのディスプレイ画面からは漏えいカ所と漏えい量がひと目でわかる。漏えい量は数字のほかに、量が多くなるにしたがって緑色や黄色、赤色で示すためわかりやすい。

毎分1.8Lの漏えいで、年間数千円のロス

 ディスプレイの右上では漏えいによってどれほど余分なコストが発生しているかを金額で表示する。

 展示会のデモンストレーションでは1分間あたり1.8Lのエア漏れが発生し続け、金額に換算して年間で約3800円の余分なコストが発生していることを示していた。実際にこうしたエア漏れが工場内に何カ所もあるとすれば、コスト高は避けられない。

 アンリツの担当者は「エア漏れを防ぐことができれば、(圧縮エアの)コンプレッサーの出力を上げる必要がなくなり、コスト抑制だけでなく、エネルギーの消費量削減につながる。温室効果ガスの排出抑制に貢献できる」と強調する。

使い方はカメラを設備や配管に向けるだけ。専門的な知識を必要とせず、通常のカメラ感覚で
使える

 圧縮エアは混合や噴霧、搬送、充てん・包装など食品工場のあらゆる工程で使われるが、配管(チューブ)の経年劣化や腐食による漏えいリスクがある。「配管の施工ミスのケースも少なくない」(担当者)という。

 漏れたとしてもガスのように危険性がないうえ、どこから漏れているのかを確認して回る負担が大きいため、手つかずの現場が多い。

 「FLIR Si124」はカメラを設備や配管に向けるだけ。専門的な知識を必要とせず、通常のカメラ感覚で使える。担当者によれば、通常1週間かかる作業が半日程度で終えられるという。

 これまで放置しがちだった漏えいカ所を特定して修繕することでコンプレッサーの負荷を軽減し、消費電力の削減を実現できる。「省エネ対策をやり尽くした」という企業には最適のツールと言える。