トヨタL&Fのフォークリフト
シェアも安全性も業界をリード、43年間トップシェア

 フォークリフトで国内で一番支持が高いのがトヨタL&Fの製品。同社のフォークリフト生産開始は1956年。わずか10年で業界1位となり、1966年〜2008年までの43年間連続で国内販売シェア1位を保っている。日本産業車両協会の調べによると、2008年の国内メーカー別シェアはトヨタL&Fが41.6%、次いでコマツ18.3%、ニチユ13.0%、TCM8.5%と続いている。
 トヨタL&Fのフォークリフトの生産累計は2008年に200万台を超えた。冷凍・冷蔵庫でよく使われるのがバッテリー式フォークリフト(以下、バッテリー車)。同社の年間販売台数でみると、バッテリー車の比率が51.1%と高い。バッテリー車の国内シェアは14年連続で1位、このうちリーチ型(立ち乗り式)は8年連続で1位となっている。『トヨタ』ブランドへの信頼、環境・安全性能で積み上げた実績が業界をリードする要因だ。
 同社は41販売店240拠点の国内最大ネットワークで顧客をサポートしている。バッテリー車の出荷先は全産業にわたるが、冷凍・冷蔵庫仕様は出荷比率4.2%を占めている。この比率を上回る営業拠点は、冷凍・冷蔵庫の顧客が多いことを表す。

アフターより「ビフォアサービス」

 これに当てはまる販売店のひとつがトヨタL&F東京の港営業所。同営業所の冷凍・冷蔵庫仕様の出荷比率は7.1%と、全社ベースを約3ポイント上回っている。東京港湾地区の冷凍・冷蔵倉庫群は同営業所の担当エリアとなっている。
 深谷俊之港営業所長は「冷凍・冷蔵庫はフォークリフトが傷みやすい過酷な環境にあり、顧客のサポートに特に気を使っている。修理が必要な事態になってからでは業務に支障が出るため、当営業所ではアフターサービスよりビフォアサービスを心がけ、事前に故障を食い止めるよう努めている」と説明する。
 冷凍・冷蔵庫仕様で特に引き合いが強い機種が、2001年発売の0.9〜3.0t積リーチタイプAC制御バッテリーフォークリフト「GENEO−R」。リーチタイプフォークリフトといえば、マスト部分が前後に移動し小回り性が良く、狭い通路幅の作業環境に適している一方、駆動と制動を後ろ1輪(ドライブタイヤ)で行なうため制動力不足、発動時の駆動力不足という課題があった。「GENEO−R」はこの問題を解消するトヨタ独自システムの『SAS-R』を採用している。
 前進と後進の切り替え、アクセルオフ、ブレーキ操作の制動がうまく働くうえ、高揚高荷役時や旋回時の不安定感、車輪の浮きをSAS-Rが抑える。また、制動エネルギーをバッテリーに回収し、長時間稼動できる。
 2008年のマイナーチェンジで、挟まれ事故を防止するハンドプロテクター、簡易荷重計、オーバースピードアラームを標準装備した。さらに、照度が高く優れた耐久性のLEDヘッドランプをオプション設定した。この設定は業界初という。いずれの装備も「作業現場での安全第一を考えた設計」(同社)。
 安全を第一に考えた提案の背景には、フォークリフト事故で年間50人が亡くなっているという荷役現場の危険な現実がある。そこで、同社は物流システムの総合体験型ショールーム「トヨタL&Fカスタマーズセンター」を千葉県市川市に構え、技能講習や安全運転講習、省エネ運転講習など実際にフォークリフトに乗って学ぶセミナーや、トヨタ生産方式の講演会などを開催している。ここでは、同社の自動倉庫やピッキングシステムなども展示、提案している。

バッテリー式フォークリフト「GENEO−R」