冷凍食品メーカーが海外に注目し、海外工場に優先投資をしてきたこの20年間に、国内の冷凍食品工場は老朽化が一段と進んだばかりでなく、冷凍食品生産拠点としての各種環境、条件も変わった。
フロンの製造が中止される2020年までにノン・フロン化を進めなければならなくなったのは、変化の象徴的な例。
また、中国など海外に目を奪われている間、日本の製造・加工技術は一段と進み、関連機器の性能は急激に向上した。バブル崩壊後、現在まで動きが続いている低価格化に対応し、コスト高が進む海外生産と、収益性の低下というリスクを埋めるため、メーカーは生産性向上と無駄をなくす生産体制の構築を急いでいるが、これをカバーしてくれるのが最新の機器類。
多少の生産性改善は既存ラインでも頑張れば不可能ではないが、5〜6割の大幅アップを実現させるためには製造ラインの大改革、入れ替えと最新機器の導入が不可欠。ある冷凍食品メーカーの経営トップは「これまで機械を修理しながらだましだまし回していたが、全部入れ替えたら生産性が5割アップになった。品質も改善された」と証言する。
昨年から今年にかけて、有力メーカーの冷凍食品工場の新増設計画が相次いでいる。(冷食工場の新増設計画のまとめ、別掲)
計画対象とした13社23工場のうち10工場は海外案件だが、かつての海外工場ラッシュ時に比べれば、国内工場が注目されているのは明らか。
海外は中国、タイが中心。現地の人件費高などコスト高の環境は厳しくなっているが、日本でもはや作れない商品を中国、タイに頼るという構図、必然性、位置づけは変わらない。
23工場のうち、チキンと冷凍野菜の工場が4つずつ。また年間生産能力が1万t級の大型工場が8工場と多い。いずれも必要の中で選択された結果。海外10工場は日本向け商品供給を中心としながら、現地内販市場も視野に入れているのがこれまでと異なる動き。日本、現地市場以外の第三国市場をめざすところもある。
これ以外に、大震災で被災した三陸で工場の再建が進んでいる。(シリーズ、次号に続く・水産タイムズ社/佐藤)