野口正見の「5S活動による食品工場改善」 −29−
事例2 ヨコ展開

 地方のT工場で釘の異物混入が発生した。原因追求のため工場内を徹底的に調べた。
 混入した異物は壁・天井などに使用されている釘やビス、あるいは機械のボルトやナット、ネジなどである。調査の結果、脱落、緩みが多数確認された。
 これらはいつ脱落したかわからないが、その多さに愕然とした。5S委員会でこの実態が報告され、「本社工場、第二工場にもヨコ展開すべきである」という結論に達した。実施した結果は下記の通りであった。

 緩んでいたネジは425本以上、ネジの脱落は339本以上だった。
 やはり最も古い本社工場がネジの脱落で80%以上を占めていた。このような調査とその結果は筆者にとっても初めての経験だった。古い工場の壁や天井は合板製であり、年月を経て、ネジやビスが抜け落ちたようだ。
 また、緩んでいるものも多数確認されたため、その劣化は進行中と考えられた。そこで、緩んでいる箇所を増締し、脱落している箇所には×印を付けた。機械類も増締めを実施し、さらに1カ月後に緩みを確認したら、まだ11本緩んでいた。
 定期的な点検をせよ、と委員会が指示した。老朽化した工場は注意を要する。5S委員会で報告され、ヨコ展開したことでわかった事例である。この事例により、以後点検のヨコ展開は活発になった。異物の釘に該当するネジ類は確認されなかった。
 ヨコ展開は改善の共有で、良好なコミュニケションが条件。改善は加速化する。