麺１本の誤差も減らし生産性向上
日水グループの日豊食品工業、中野仁治社長
中野仁治社長
日本水産グループの冷凍食品メーカー、日豊食品工業（熊本県城南町）は、養鶏業が盛んな九州の立地を生かし、オムライス、オムレツや茶碗蒸しなどの鶏卵加工品を中心とし、最近では水資源の優位性を背景として冷凍麺を柱事業に加え、ニッスイを通じた市販用、業務用への商品供給で業容を拡大してきた。
主力のオムライスに使う卵シートは、卵のふんわり感・しっとり感を保つ一方で、破れないタフさという相反する要求を満たさなければならない。また、卵は加熱すると焼色にバラツキが生じやすく、焦げカスは異物のクレーム対象になりやすいという、加工食品としては難しい食材だが、こうした難問に高い技術力と品質管理で応え、安定した需要を維持している。
調理冷凍食品のほかに、良質の水を生かした製氷事業と、営業冷蔵倉庫事業を併せ持つのが同社の特徴。これにグループの釣り餌用沖アミ事業が４月から全面的に同社に集約された。合併した�蠅┐軌貳屐閉酸柑圈砲汎�水の沖アミ取扱額が約20億円あり、日豊食品は既存事業と合わせて倍増の40億円に拡大する。農産加工の新事業にも取り組む。日豊食品はいま、大きな飛躍期に入った。
中野仁治社長に現状、今後の事業戦略などについて聞いた。
――鶏卵加工品と冷凍麺を事業の中心に置いている。
中野 オムライスが断トツに多い。オムレツと合わせ、鶏卵製品が食品事業の60％。茶碗蒸し13％。麺類はアレルゲン対策で粉が工場内でコンタミ（混入）を起こさないように、焼きそば、ラーメン、うどんを協力工場からの仕入れに切り替え、社内生産は日本そばだけに絞ったので食品事業の８％になった。しかし冷凍麺は需要拡大が今後も見込めるので、事業としては太くしたい。これに製氷部門の17％が加わる。
全社の81％が食品事業。ほかに営業冷蔵倉庫の物流事業が16％、不動産事業３％がある。
――日水グループの工場の中では“サナカ”が絡まないユニークな存在。
中野 ポイントは水。食品工場の基本である水が熊本は大変恵まれている。阿蘇山の伏流水でつくる氷がおいしいのは言うまでもないが、オムライスに使う米の処理も水が決め手。これに自社で冷蔵倉庫を持ち物流までカバーできるのは当社の一番の特徴であり強み。
――経営上の最重要課題は？
中野 日水グループの準直営工場として役立ちたい。これを前提として当社の最大分野である冷凍食品事業を安定拡大させるのが私の役目。グループの中で大きな存在ではないが、逆に小回りを効かせて機敏に対応できるのが当社の強み。オムレツ、オムライスをはじめ商品に対し、日水の得意先から様々な要望をいただいているが、これに応えられるように品質管理力を強化し、技術レベルを高めていきたい。
――原料対策は？
中野 使用量の多い鶏卵、米、そば粉などは安定調達先を持ち、トレース管理しながら仕入れている。仕入先は日水グループの品質管理基準をよく理解している。価格も一括仕入れの優位性を発揮している。
――では生産性は？
中野 生産性向上は緊急で重大な課題。規格精度を高めて原料ロスを削減するよう努めている。目標は規格に対し上限で２％以内。１食250ｇの製品なら上限で255ｇ以内に収まるように取り組んでいる。５ｇの差と言えば麺製品なら麺１本で違ってくる誤差。この精度に挑戦している。グループで取り組む「人時生産性倍増計画 ２in５」（５年間で生産性二倍）にも引き続き挑戦している。朝のミーティングなどの機会にも繰り返し考えを説明し、社内の意識の徹底と実現をめざしている。
――食品工場と物流部門を持っているので廃棄物等を総合的に捉えられる。食品と製氷事業があるので共通する水の管理もしやすい。
中野 それが当社の最大の特徴。幸い、当社は阿蘇山系と高千穂水系の両方の水を使える。しかも「名水百選」に入る高品質の水。この強みをさらに活かしてみたい。
エサ事業を成長軸に農産も拡大
――中長期の経営戦略は？
中野 日水グループの�蠅┐軌貳屬鬘慣遒帽臺擦掘�日水の餌用オキアミの販売業務も合わせて、当社としては新事業の水産分野に入り込むことになった。釣り餌用オキアミはえさ一番と日水の販売高を加えると約20億円の実績があり、当社既存事業と合わせると二倍の約40億円になる。この新事業を成長軸として安定成長できる基盤固めを進めたい。さらに、農産事業にも挑戦する計画を練り上げている。これは検討中も含め全体を詳細に語るには時間が必要だが、野菜ビジネスには大きな可能性を感じている。人員、設備投資も含め、準備を進めているのは間違いない。
――今期の見通しは。
中野 餌の水産事業で20億円、食品その他既存分野で21億円で収益確保をめざしている。事業環境は大変厳しいが、夏の猛暑の後押しで製氷事業が好調。上期は目標の半分を稼いだ。食品も物流も向かい風が強いが、ここで生き残ればさらに強い存在感を示すことが出来る。潮の変わり目を読み取り、スピーディーに対応できればそれが実現できる。当社はいまが変わり目。緊張感はあるが、新しい枠組みに向かって挑戦する。
＜中野社長の略歴＞昭和46年日水入社。トロール船に約５年。二百カイリを機に陸上に配置換え、大阪支社で加工食品の営業を11年。東京支店で課長を４年。名古屋で課長４年。その後、高松支店長、仙台支社長、大阪支社営業二部長を歴任。福岡支社長を２年８カ月。今年３月、上田勉氏の後任として日豊食品社長に。
昭和22年１月福岡生まれ。水産大学校漁業科から専攻科に進み航海士の資格を持つ。紳士的な61歳。
＜日豊食品工業の概要＞▽本社・食品工場 〒861-4212熊本市下益城郡城南町築地624−19（電話0964-28-本社7071、食品工場7730、城南事業所6557、Ｆａｘ5656）
▽資本金 １億8000万円（日本水産100％）▽代表者 代表取締役会長・上田勉、代表取締役社長・中野仁治▽主要製品 �［篥狡翰�食品（オムライス・卵焼き・オムレツなど鶏卵加工品60％、茶碗蒸し類13％、日本そばなど麺加工品８％、その他スイートポテトペーストなどいも加工品）、�∪宿浩宿福壁后Δ�ちわり氷・かき氷など、食品売上げの17％）、�Ｊ�流16％、�ど堝飴今魁�