強みはトータルバリューチェーンマネジメント
世界を引っ張るお手本に
味の素冷凍食品��
常務執行役員 国内統括事業部長 下保 寛 氏
味の素から７月１日付で異動した。欧米、香港と海外経験が豊富。工場の改善活動にも携わった。味の素冷凍食品の強みは、設計した製品を安定生産する、トータルバリューチェーンマネジメントと見ている。
下保常務執行役員
――外から見た味の素冷凍食品に対する印象は？
下保 設計した製品を安定生産し、その中で永久改良を継続する。生産マネジメントがしっかりしていると見ていました。多くの国で事業展開してきた経験や人材、ノウハウは味の素グループの中でも群を抜いています。着任して感じたのは、生産、販売、物流、原料といったバリューチェーンがすべて近いこと。社員が全体を見ながら仕事をし、他の部署でも相談すればアドバイスしてくれる、協力体制が出来上がっています。
――海外経験が豊富だ。
下保 2006年の買収直後に香港アモイフードに出向（会長）しました。しかし当時、冷凍食品は手作業で、餃子などをより多く作った人が高い給料をもらえる仕組みでした。これでは品質が安定しません。現地の従業員を教育しながら品質と生産性を高め、安定生産する仕組みを定着させるのには苦労しました。その時、味の素冷凍食品のスタッフには大いに助けられました。当時の味の素冷食のメンバーが今は国内の各工場にいます。香港で工場を良くする仕事が私の原体験の１つになっています。
――フランスの冷凍食品メーカーを買収した。
下保 昨年11月に買収したＬＴＳ社（旧ラベリ・テレトル・スージェレ社）は、ニッチをねらった小規模なメーカーで、マカロンなどのデザートを得意にしています。（買収したばかりだが）和風デザートを作ろうと、現地で好まれる抹茶や柚子を使ったマカロン、シュークリームを計４品開発し、今年４月から日本料理店などに販売しています。これだけ早く新製品が発売できたのは、欧州に日本の食品メーカーに対するリスペクトがあるからでしょう。特に当社の国内での実績を示すと、海外では味の素グループが買収したことに好意的な反応が返ってきます。ＬＴＳ社はこれからもっと製品の品質が向上し、企業価値も上がります。日本の冷凍食品事業が海外のお手本になっているのです。
――敢えて言うと、課題は？
下保 過去５年は製品イノベーションにチャンレジしてきました。この先もイノベーションを継続するためにも、土台を強くしながらイノベーションチャレンジが必要です。
（かほ・ひろし）1988年味の素入社。業務用営業、販売企画部、食品部家庭用グループ、米国留学（ＭＢＡ）、海外食品部を経て2006年香港アモイフード出向（会長）、11年本社経営企画部専任部長、13年コーポレート戦略部長、15年欧州アフリカ本部兼味の素ヨーロッパ副社長、今年７月１日付で現職。国内統括事業部は家庭用事業部、業務用事業部などを再編して同日付で新設した。1965年（昭和40年）10月15日生まれ、52歳。東京出身。一橋大社会学部卒。