前川製作所は韓国のまぐろ保管冷蔵倉庫業界大手の海天グローバル(株)(釜山、朴鎬均代表理事)の釜山本社工場に、空気を冷媒に使う冷凍システム「パスカルエア」を用いた最新鋭冷蔵プラントをこのほど引き渡した。このシステムを海外に輸出するのは初めて。
海天グローバルの冷凍倉庫
同倉庫は庫腹3090t(公称)。パスカルエア3基を使っている。
パスカルエアは空気を冷媒にした冷凍システム。冷蔵倉庫内から吸い込んだ冷たい空気を圧縮して発熱させ、それを冷やしたのちに膨張させることで吸い込んだ空気より低い温度にして冷蔵倉庫に戻す。これにより庫内を−50℃〜−100℃の超低温に保つ。フロンはもちろん、アンモニアなどの冷媒も使わない。
まぐろを保管する超低温冷蔵庫には多くのメリットがある。
まず省エネであること。
ターボ型膨張機とターボ型圧縮機という2つの回転部を1つの機械に集約した「膨張機一体型圧縮機」を使用し、膨張機で発生する動力を回収して圧縮機動力に使用するなどの特徴的な構造を持っている。
その真価は−50℃以下で発揮され、従来のシステム(冷媒にHCFC22を使用した「蒸気圧縮式フロン冷凍システム」)と比べた場合、−60℃の時は効率が25%高い。さらに、従来必要だった「庫内ファンコイルユニットの除霜に必要だったエネルギー損失」や「ファンモーターの動力分の熱損失」を考慮すると最大50%の省エネとなり、その分CO2排出量削減が期待できる。
朴鎬均代表理事
通常の−60℃の運用以下の温度で運用する際の効率の低下が少ないため、従来機との差はより大きくなる。
高圧ガス保安法の適用外なので、届出や申請などが必要なく、保守管理が容易なこともメリットの一つ。
日本国内では既に数10台を出荷しているが、今回の納入を機に海外企業への販売が加速することを期待している。
海天グローバルはこれまでまぐろの大卸的な業務を行ってきたが、加工設備を持つ自社倉庫を新設したことで、切削加工なども出来るようになった。朴代表理事はこれを機に「日本への輸出を増やしたい」と語っている。
導入したパスカルエア、機械音が比較的静かで潤滑油臭がなく、高圧ガスの規制もない。
機械室がクリーンな環境に保てるのも特色の一つ