自社工場100%生産に限界も、グループ内で品目再編か
主力の「餃子」フル生産でも間に合わないほど好調
ニチロサンフーズ・佐藤 光一社長

 ニチロサンフーズはマルハニチロ食品グループで餃子、ハンバーグなどの調理冷凍食品を手がける有力メーカー。佐藤光一社長はニチロの業務用商品の開発、営業を長く務め、取締役から同社に転じ社長に。それまでの経験を生かし、商品力と小回りの効く営業展開で需要筋の評価を高めている。
 冷凍食品業界では海外生産が当たり前になったいまでも、同社は国内工場(南陽工場=新潟県長岡市)100%の生産を続けているが、生産規模、取り扱い量の増加と併行して、いま、次世代型のメーカーに脱皮しようと次の戦略を考えている。佐藤社長に語ってもらった。

     佐藤社長

 ――主力の調理冷凍食品が好調だ。
 佐藤 ハンバーグは春の新製品「ソースイン」が好調で増収を底支えしており、ハンバーグ全体で5%増。餃子は焼き、蒸しなどいずれも好調で17%増。フライ類も6%増と好調だが、ハム・ソー類が12%減と苦戦している。餃子、ハンバーグとフライは今後も需要拡大が見込める。特に当社の強みが生かせる餃子は一段と磨きをかけて拡販する。餃子をさらに強化するため、ほぼ全品を今回リニューアルした。

 ――フランクフルト類も長く取り扱っている分野だが。
 佐藤 このフランク類が苦戦している。しかし、フランク類は当社のDNAとして残る分野であり、顧客からの要望も根強い。私の出自から調理冷凍食品が第一、という考えが強くあるが、これを反省し、フランク類も強化することを今回決めた。フランク類は自然解凍で対応できる冷凍食品。しかも、世の中に様々な食品メーカーがあるが、調理冷凍食品とフランク類を同時に扱えるのは当社だけ。これは当社の強みであり、大きな差別化ポイント。さらには、グループのマルハニチロ食品、アクリフーズが持つ経営資源、技術力、調達力、物流機能なども生かし、経営効率化を進める。

 ――規模が相当大きくなってきた。自社100%生産を今後も貫く?
 佐藤 自社生産100%で本当にどこまでやれるか。潮の変わり目に来たかと実は感じている。当社の得意分野とそれ以外を線引きし、当社は得意分野に集中することが収益力改善につながるのではないかと考えている。当社の柱は餃子、ハンバーグ、フライ類とフランク類。特に餃子は朝7時半から夜2時半まで製造しているが、それでも需要に追いつかない。この規模のままなら年間1万6000t、売上げは100億円から110億円程度が限界かとも思っている。

 ――“次世代”型工場に改善するため、スパイラルフリーザーを新規導入した。
 佐藤 工場全体を中期計画で大きくリニューアルしようとしている。その一環でスパイラルフリーザーを導入したが、新型であり、凍結能力は従来の1.6倍と生産性が高い。こうした機能を強化し、生産効率を高めるため、計画的な投資も続ける。海外生産にも負けないメーカーに機能、商品、企業価値を磨き上げ、顧客に選択されるメーカーをめざしている。

 ――市場では原料高に価格低下が重なり、今期は収益面で厳しいメーカーが非常に多い。
 佐藤 当社の売上げは前々期が15%増、前期も7%増と高い伸びが続き、経常利益は前期に過去最高の5億6000万円を確保し、経常利益率は4.6%という高い数値を記録したため、今期予算は逆に売上げ2%増、利益は前期並と抑えている。
 これに対し、4〜8月実績で売上げは1.1%増と想定内にあるが、商品単価が上期4.7ポイントも下がっており、これに原価高も加わって、利益予算は残念ながら未達。特に、鶏胸肉の仕入れ価格は前期に比べ32%もアップしている。そこで生産性改善「ポルフ」活動や在庫圧縮、仕入れの見直しなど様々な対策を講じているが、微増収で減益という状態が続いており、厳しい。
 だが、幸い、9月は5%増と盛り返しており、4〜9月累計でも2%増と予算まで挽回している。

 ――ニチロサンフーズは親会社マルハニチロ食品の製品、大手CVSの商品も手がけている。
 佐藤 その3本が販売先の柱。しかし、今期は事業構造が大きく変化しているのが特徴。総売上げの65%が自社ブランドを冠するプロパー事業だが、4〜8月で2.8%増、4〜9月では3%増収と堅調。これに対しコンビニエンスルートは4〜8月で2%減、マルハニチロ食品向けも1.6%減と前年割れだったが、9月になって、CVS向け7%増、マルハニチロ食品向け12%増と大幅回復しており、プロパー事業も3%増と好調。3ルートが揃って勢いが戻ってきた。
 プロパー事業の半分が惣菜用だが、プロパーの生産量は7%増と売上げの伸び以上に順調に増えている。低価格化により売上げは3%増に抑えられている。幸い有力卸店グループに「選定商品」として認定されたものが高い評価を受けて好調に推移している。CVS向けは単品の大型商材が終売となったが、中型商品でこれをカバーし、新規顧客も加わって上期は7%増に戻した。
 マルハニチロ食品向けでは市販用餃子が当社業績に大きく寄与している。マルハニチロ食品を通じた生協・無店舗販売向けではキャベツメンチなどが好調。合わせてマルハニチロ向けの販売は上期2%増と前年を上回っている。