多列式液体・粘体包装機の新機種完成
コマック 取締役副社長 堀内 省吾氏
液体や粘体の自動充填包装機を主力とするコマックは汎用型の多列式機種を完成させた。フィルムの自動繋ぎ装置を標準装備することで、ラインの生産性向上をユーザーに提供する。機械だけでなく、新たな包装袋を仕掛けることで市場の創出にも力を入れている。
堀内副社長
――新機種をこのほど完成させた。
堀内 多列式液体・粘体自動充填包装機である「ＥＲＬ−3000」は味噌を手がけるユーザーのもとで開発を進めていて、昨年から稼働しています。その汎用型の機種として今年から本格的に売り出します。製袋幅が耳スリットを含めて300ｍｍまで可能で、多列の４方シールで充填包装します。通常、幅が広いフィルム原反はフィルム繋ぎと調整に手間と時間がかかり、歩留まりを悪化させる原因となりますが、この機種はスプライサーと呼ばれるフィルムの自動繋ぎ装置を標準装備しているので、ポンプを止めることなく、そのままの速度で包装できます。
――ユーザーが抱えていた懸念材料を解消した。
堀内 多列化することで１つのフィルム原反を小さくすることができます。原反が重いとフィルムを交換するオペレーターにとって負担となります。30�堋�のロールを女性のオペレーターが持ち上げるとなると、かなりハードな仕事です。
また、多列のメリットは生産性の向上ももちろんありますが、包装そのものの条件を広くします。例えば４列式の装置ですと、各々の列はフィルムをゆっくりと回すことができます。限られた時間で規定量を生産するのに、単列だと速くロールを回転させなければなりませんが、速く回転すればするだけ、温度や圧力がかかり中身に不具合を起こしかねない事態となります。ゆっくり回転させた方が対応できる包装の範囲が広がることとなります。
――高速回転は負担がかかっていた。
堀内 この新機種は量産型といっていいでしょう。時代は多品種少量生産という流れで、それには逆行しているかもしれませんが、定番ものの生産に威力を発揮できます。昨年から先行して導入している味噌メーカーでも、主力のラインで稼働しています。私たちの開発コンセプトとユーザーの商品コンセプトが適合したケースであり、スプライサーの標準装備など多列型には必須のアイテムが揃っている点も大変喜んでいただいています。４台並べるよりも、この機種１台で済み、スペースも半分で済みます。
多列式液体・粘体自動充填包装機「ＥＲＬ−3000」
――近年の包装機を取り巻く環境は？
堀内 ユーザーの製品のリニューアルが盛んで、特に食品は新商品のサイクルが早いですね。しかし機械の改造で済むケースが多く、更新となると一歩踏み出せるかどうか、ユーザーの判断が問われるところ。売れる商品となれば設備投資すべきでしょうが、その逆ともなれば痛手となってしまいます。売れる商品や主力商品ならば、「ＥＲＬ−3000」のような機種は決して費用のかかる投資ではないと思います。ユーザーにとっても生産ラインを後押しするものであり、それをもとに攻勢に出るべきだと思います。
――包装機以外も提案している。
堀内 簡易開封性の完全包装袋である「イーパック」は小さな子どもから高齢者まで力を入れずに簡単に開くことができます。シール部分はヒートシール溶着され、外界と完全に遮断。また、アルミなどのバリア性のある基材や、和紙などの装飾性のある基材のラミネートが可能で内容物を保護できます。
――“ユニバーサルデザイン”が注目される以前から実績を重ねている。
堀内 液体や粘体の製品を充填包装する際、完全液中シール方式を採用することで包装商品内のエアーの混入を防止することができます。雪印乳業様のチーズはこの包装形態が確立したからできた新しい市場です。従来からあるスライスチーズはラッピング包装であり、完全密封ではありません。チーズを完全密封することができたので、賞味期限の延長に役立てることができました。
――イーパックの可能性はまだまだ広がる。
堀内 最近では、カバヤ食品様の「生キャラメル」の包装にも活かされています。通常、市場に出ている生キャラメルは“要冷蔵”が必須でチルド流通が大半、しかもひねり包装です。この包装形態にすることで、生キャラメルの常温流通が可能となりました。おそらく粘性のある菓子は新しい市場となっているでしょう。
私たちは包装形態を提案し、ユーザーとともに新しい市場の創出に携わることができる――非常に好奇心がそそる仕事だと自負しています。