生シラス、流通拡大に期待
にんべんいち(2)

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 大洗魚卸売市場は毎朝10時半頃からセリが始まる。にんべんいちでは坂本富計社長がセリに出向く。シラスは鮮度が命。同社の加工場は市場から車で10分弱の場所にあるが、せる前のものをあらかじめピックアップしておき、高鮮度の生シラスを搬送担当者に引き渡す。担当者はすばやく搬送し、加工場に到着する。坂本貴英常務は加工場で、シラスを受け入れる準備を進める。
 搬入したシラスを電解次亜水で流水洗浄して滅菌する。水切りして、6〜10人ほどでコマセアミ、カニの稚子などの異物をピンセットで検出する。その後、トレイ(100g、500g)に計量し、−45℃で25分以上急速凍結する。
 生シラスを始めた2009年には、秋漁のみで約4万パック(当時は1パック=100gのみ)を製造し、翌年の春までにそのすべてを売り切った。メインのシラス干しと同時進行で製造しているため、時間も生産量も限られているが、生シラスのブランド浸透とともに年々生産量を伸ばしている。
 昨年の秋漁で加工した生シラスもすべて売り切ったため、今年の春シラス(4月末から6月末がピーク)でもシラス干しとの兼ね合いを見計らいながら加工に着手している。
 「急激な生産量の拡大は難しいが、販路をより広い地域に拡大させたい。漁の本格化とともに、良質な生シラスを継続的に提供できる土台を築きたい」(坂本常務)と語る。
 凍結機の導入を機に加工場のレイアウトを変更、自社検査室を移設した。ペトリフィルム培地やインキュベーターを使って、食品中の菌の状況を自社検査している。「生シラスを販路拡大させるために、安全安心はこれまで以上に徹底させたい。特に検査には充分に投資し、生シラスの販売を軌道に乗せたい。全国のみなさんにいつでも最高品質の大洗の生シラスを食べていただきたい」(坂本常務)と意気込んでいる。(シリーズ終わり)

生シラスを凍結