水産総合研究センターの中央水産研究所はアメリカオオアカイカのスリ身化に取り組み、技術開発を終えて特許を出願した。今後は水産業界に実用化、普及を働きかけていく。大阪市で16、17日に開催される「ジャパンナショナルシーフードショー大阪」をはじめ、様々な機会を通じて積極的にPRする。
資源が豊富なアメリカオオアカイカをスリ身化する際、課題は2つあった。1つは筋肉中にアンモニア臭があり、いわゆる「えぐ味」とされる辛み、渋みがあること。もう1つは筋肉をすり潰すと高いたん白分解酵素が働き、冷凍スリ身にするとゲル化能力(固まる力)が失われてしまうこと。
中央水産研究所の利用加工部はこれらの課題を解決する方法として、キレート剤(金属イオンを補足する物質)を加えることにより、ゲル化能力を持たせるため酵素活性を抑えながら水晒しを行い、スケソウダラの陸上スリ身程度の弾力を持たせるとともに「えぐ味」も除去した。
アメリカオオアカイカの
スリ身による蒲鉾
製法としては、アメリカオオアカイカの身の部分(頭や足はいまのところ使用しない)を1cm程度の大きさに細断し、これにクエン酸ナトリウムを加えて水晒しを行ない、遠心分離機で脱水する。その後、ミンチにかけてソルビートを添加するという比較簡単な製法でスリ身化ができる。装置としては、遠心分離機のみで製造が可能という、いたってシンプルな製法。
また、骨のない大型のイカのため、歩留まりは40%〜45%と魚の場合の20〜25%と比べて高い歩留まりとなっている。頭や足もスリ身化できるが、きょう雑物や色が付く。また、水晒しをして「えぐ味」を除き、具材として製品に混ぜることもできる。
このイカのスリ身は白い色で無臭であることから板蒲鉾や焼き蒲鉾、笹蒲鉾ができる。ただし、いまのところ製品の柔らかさ・硬さは、魚肉ソーセージ程度。
アメリカオオアカイカの原料価格はキロ40円程度だが、100円程度に値上がりしても歩留まりが高くスリ身の原料として採算が合うという。
これまで中心となって開発に取り組んでいる利用加工部の平岡芳信品質管理研究室長は「製法が簡単なので、原魚からスリ身を作って練り製品を製造している地場の蒲鉾会社でも、遠心分離機があれば自社工場で簡単に製造できる。また、大規模にスリ身を使用する大手・中堅の水産練り製品会社向けには、産地で専門に冷凍スリ身を製造してもらわなければならない。今後、こうした冷凍スリ身を生産してくれる加工場や製品に使用してもらえように蒲鉾会社をはじめ、水産珍味会社、食品会社に積極的にPRしていきたい」としている。