三菱総合研究所(東京都千代田区、森崎孝社長)のHACCPナビ事務局はウェブセミナー「地域で輝く!食品企業におけるHACCP対応と自治体支援の最前線」をこのほど開催した。北海道保健福祉部健康安全局食品衛生課の井上有美氏、一正蒲鉾北海道事業部北海道工場の戸田弘平顧問らが講師を務め、「北海道HACCP自主衛生管理認証制度(北海道HACCP)」の取り組みについて説明した。
戸田顧問
北海道HACCPは、登録評価機関と専門家で構成される認証審査会が道内食品事業者の自主的な衛生管理を審査・認証する制度。大がかりな設備投資は不要で、客観的評価に基づく社会的な信頼を獲得することができる。昨年度末時点で累計307施設が認証取得している。
自主衛生管理における企業姿勢を消費者に訴求できる点も強みの一つ。北海道は認証食品ガイドブック「食の安全にこだわる」の配布のほか、北海道庁広報コーナーでのパネル展示、イベントへの出展を通して認証商品を広くPRしている。
北海道HACCPに取り組む企業の代表として登壇した戸田顧問もこの点を高く評価しており、「優れた衛生管理施設として、行政が積極的に宣伝してくれるのはとてもありがたい。我々事業者としてもこの制度を応援していきたい」と語った。
一正蒲鉾は北海道HACCPだけでなくJFS認証、FSSC22000、ISO22000などの衛生管理認証を積極的に取得しており、HACCPの運用に力を入れている。
戸田顧問は▽現場の担当者がハザード分析をする▽最初から完璧なマニュアルを作るのはタイムロス――など、これまでの失敗経験から得た教訓を聴講者に示した。講演の最後には「HACCPの運用は、従業員と製造施設を守る砦でもある」と取り組みの意義を強調した。
氷川研究員
同セミナーでは、三菱総研がアイネスと共同開発した食品関連事業者向けクラウドサービス「HACCPナビ」についても説明した。このサービスは厚労省が定める「HACCPに基づく衛生管理」(旧基準A)やJFS規格に対応。衛生管理に必要な文書・帳票の作成や運用実績記録を支援する。
危害要因分析画面の簡素化や、ファイル添付機能の実装などのアップデートを10月に実施。来年1月にはファイル管理機能の追加も予定する。
三菱総研の氷川珠恵主席研究員は「HACCPナビは帳票作成支援だけでなく、総合的な食品安全管理が可能なツールとしての位置付けをめざす。教育コンテンツの搭載も視野に入れており、今後期待していただきたい」と呼び掛けた。