小型プロトン解凍機の実力に迫る
東京都内で体験会を開催中
今年１月発売の小型プロトン解凍機、下室で解凍
する、上室は保管庫
冷熱エンジニアリング会社の菱熱工業（東京都大田区、近藤貢社長）は量販店や外食店、テイクアウト専門店向けに、新製品の小型プロトン解凍機「メルツ“解凍”・プロ」を使った体験会を東京都内で開催している。本紙記者がこのほど参加し、冷凍鶏肉２�圓鬘鎧�間で解凍するなど業界最速をうたう解凍機の実力に迫った。
小型プロトン解凍機は業務用冷蔵庫とほぼ同じ大きさ。山口浩幸食品機器リーダーが庫内から取り出したのは解凍した業務用の焼き鳥パック。１本あたり25ｇの串打ち焼き鳥が20本入っている。見た目は生肉と変わらず、ドリップ量も少ないことがわかる。
この日朝までカチカチに凍結されていたとは思えない。表面温度を10℃近くにコントロールしながらわずか２時間で解凍したという。表面温度を上げれば解凍スピードはさらに増す。「冷蔵庫では一晩かけても解けない」（山口氏）。
解凍スピードの速さは特許技術の「低温高湿度解凍」による。10〜30℃の温度帯で低温域を維持しながら湿度100％の庫内環境を作りあげる。これによって空気中の水分が凝縮熱となって冷凍食材に短時間で大量に熱エネルギーを与えることができる。湿度100％の庫内環境を作るのは非常に難しいが、冷風と蒸気のバランスを調整することで実現した。均一な循環風量で解凍ムラも解消する。
予約タイマー機能で食品ロス削減
今回の体験会では、小型プロトン解凍機の使い方次第で店内オペレーションの効率化や作業負担の軽減、食品ロスの削減につながることを訴求する。
たとえば午前10時開店のから揚げ専門店の場合、通常は２時間以上前から１日分の仕込みを始めるが、予想に反して売れ残れば食品ロスが発生する。
そこで下味を付けた鶏肉をあらかじめ冷凍して解凍機に保管しておく。予約タイマー機能を使い、開店時間に合わせて解凍すれば、翌日の店内作業は揚げるだけになる。
夕方のピークタイムには昼頃から解凍すれば間に合う。ランチタイムの販売実績から夕方の販売数量を予想して、必要な分だけ解凍することで食品ロスは最小限に抑えられる。
山口氏は「解凍機を使えばプロの料理人や熟練者がいなくても店は回せる。新規出店や飲食業参入のハードルを下げる」と強調する。
プロトン凍結機で凍結した握り寿司
握りずしもおいしく解凍
小型プロトン解凍機は握り寿司の解凍にも威力を発揮する。握り寿司は解凍が難しいとされる。過去の例ではシャリが解けにくい、乾燥が進む、寿司ネタが変色しやすいといった課題があった。
この問題を解決したのは「特殊な容器」と「プロトン解凍」の組み合わせである。詳細は企業秘密だが「シャリがしっかり解凍でき、ネタはヒンヤリ」が可能となる。この日は解凍温度を30℃に設定し、まぐろやサーモン、いかなど12貫を40分かけて完全解凍した。味は店内加工した握り寿司と変わらないおいしさ。解凍品質の高さを実感した。
人手不足を背景に量販店などでは、人員を確保できた時に寿司を作って冷凍しておき、出荷に合わせて解凍したいというニーズが高まっている。解凍機を共同開発したプロトンエンジニアリング（東京都品川区）の庄司晃社長によれば「半解凍にして取り出せば、セントラルキッチンから店舗への輸送時に解凍を完了させることができる。ちょうどいい状態で店頭に並べられる」という。
太巻きや細巻きも短時間で解凍できる。大型解凍機を導入したある量販店では昨年の節分に合わせて恵方巻5000本を短時間で解凍した。普段から冷凍してストックしておけば、必要量に合わせて解凍できるため、廃棄ロスやチャンスロスを減らせる。
プロトン解凍機で解凍した握り寿司、寿司ネタの色つやが良い
近藤社長「低温解凍の時代つくる」
菱熱工業の近藤社長は「『低温解凍』の時代を作りたい」と語る。解凍工程は冷凍工程に比べて設備投資が後回しにされやすく、食材の表面温度を20〜30℃で解凍する製造現場は多い。ただ、最近は畜肉や鮮魚、冷凍惣菜などの解凍で表面温度を10℃以上にしたくないというニーズが高まっているという。
「解凍の手法や基準は各社各様で、自然解凍や流水解凍、電子レンジによる解凍もある。小型プロトン解凍機は他社より低い庫内温度で解凍できるのが強み。10℃で湿度100％の庫内環境を作ることができる。低温解凍の効果を広めて、表面温度10℃での解凍を食品業界の常識にしたい」。
菱熱工業の近藤社長は「『低温解凍』の時代を作りたい」と語る
【体験会の開催概要】
▽１月12〜29日、平日11〜12時、13〜17時。
参加は予約制。申込み窓口は菱熱工業冷熱ドメイン山口浩幸氏まで。電話03-3778-2116、メールh.yamaguchi@ryonetsu.com。