純国産、天然酵母を発酵する大型機完成
 「安定した種づくり」は小型機で実績重ねる

 愛工舎製作所は自然発酵種・天然酵母発酵機「ルバン」の大型機、100リットルタイプを開発した。以前から展開している同シリーズの小型機は「安定した種づくりに役立つ」とユーザーからの支持が厚く、国産の大量生産向け機種の登場が望まれていた。発表早々、大手製パンメーカーが導入を決めるなど、幸先のいいスタートを切っている。

     ルバン100

 ルヴァン種(天然酵母)を使ってパンを作りたくても、手間がかかり、扱いが難しいため、「誰でも手軽に」というわけにはいかない。その課題を解決するために開発したのが、同社の発酵機「ルバン」シリーズだった。
 機能の最大の特長は、温度・時間・撹拌管理の自動化。これら手間のかかる製造管理も、ルバンはパネル操作でできるため、誰でも簡単・確実にできるようになった。今回開発した大型機は、「単に従来機を大型化するのでなく、攪拌軸を一軸から二軸にすることで大容量であっても更に品質の安定した種づくりを実現した」と牛窪洋光専務は太鼓判を押す。完成した自然発酵種・天然酵母はタンク下部のバルブプレートから簡単に取り出せるため、女性スタッフでも扱いに苦労しない。
 衛生度や安全性も考慮している。スクレーパー(かき取り)付きの撹拌子や取出し口はステンレス製のため、酸による腐食がない。蓋もステンレス製のカバーと安全ガードの組み合わせ式だが、粉を投入する際は安全ガードを外さなくてもできるため、手間がかからない。
 シリーズが誕生した当初は、1バッチ30リットルと60リットル(その後、70リットルまで対応可)タイプで展開。コンパクトな機体のため、小さなスペースを有効活用できる。このため、町のベーカーリーショップが導入しやすく、本物志向のパンづくりをめざすユーザーから支持を得てきた。

 大量生産向けの機種がないわけではなかった。仏ベルトラン社が開発した自然発酵種・天然酵母発酵機「フェルメント」は80リットルと140リットルタイプがあり、同社は販売代理店として、日本のユーザー向けに提案している。大手製パンメーカーの大型工場が導入するなど、実績を積んでいる。
 しかし、「フェルメント」を日本で展開する際、オリジナル機種をそのまま提案しているわけではなかった。オリジナル機種の撹拌子や取出し口の一部が酸で腐食が懸念されるアルミ材であるため、それをステンレス製に改良するなど、日本のユーザー向けに細かな部分でマイナーチェンジをしている。
 「材質の問題だけではありません。何かがあった際の補修部品の対応など、海外製には懸念材料がないわけではありません。私たちもその点を改善できないかと長く検討していました。それならば、日本のユーザーニーズに合致した仕様の大型機を我々で作ろう、となったわけです。日本のユーザーが国産機を望んでいるのを充分感じていましたから」と牛窪専務は説明する。

       牛窪専務

 このステンレス製の大型機「ルバン100」は、今年2月に開催された「モバックショウ2015」で初披露した。これに先立ち、長年のユーザーである、大手製パンメーカーにもオリジナル機種の完成をアナウンス、会場で実機を見てもらった。すぐに導入が決まったという。
 このほか、同社が今後特に注力したい層である、中堅から大型工場向けのユーザーにもいいアナウンスができたと手応えを感じている。
 4月15日〜17日、東京ビッグサイトで開催される「デザート・スイーツ&ドリンク展2015」(ファベックスや食肉産業展などと併催)にも同機を出展。最新型の自動分割機「Diva Neo」と組み合わせた製パン工程を提案する。「モバックショウではルバンによる低温長時間発酵の生地を分割し、成型することなく焼成するまでを実演し、効率化とおいしさの両立を来場者に実感していただいた。デザート展でもセミハードや菓子パンを中心にした実演を予定している。ぜひご期待ください」と語っている。

 フードエンジニアリングタイムス(FEN)2015年4月1日号掲載