中国の大手食品企業、龍大食品集団の日本法人、大新貿易（東京江戸川区）は食品工場に対する人材派遣事業を拡大している。同社は2004年に発足、龍大グループが生産する調理冷凍食品や春雨などを日本に輸入販売している他、中国の食品工場で経験を積んだ優秀な人材を日本に研修派遣している。
中国からの人材派遣事業は会社設立前の03年末にスタート。初年度はわずか数十名の実績だったが、需要は倍々ペースで拡大し07年実績は約100名。08年は８月末現在で約120名を日本の食品工場に派遣している。派遣先は日本各地の冷凍食品工場や水産加工場、ハム・ソー工場など。研修生は現地で日本語教育も受けており、「日常会話程度なら日本語もОＫ」（大新貿易）。言葉による障壁の心配はほとんどない。
派遣する人材は、中国に進出している日本企業の関連工場で生産現場の経験を積んでいるため、「日本の衛生基準の高さなどの基本は既に熟知している。手洗いの重要性など一から教える必要がない。１年から３年間の研修なので、安定して計画的に研修させることができる」（夏冰日本事務所代表）のがメリット。一般の人材派遣と違い、「研修生は日本での経験を中国で生かすことを目的としているため、学習意欲が高い」のも特徴のひとつ。
日本の食品工場は若い労働力が慢性的に不足。特に地方では労働者の高齢化が進んでおり、若手の労働者不足に悩んでいる。こうした環境の食品工場に中国の研修生を派遣すると「とても真剣に研修をしてくれる、お陰で工場の平均年齢が一気に下がり、研修現場に活気をもたらす、と派遣先からも大好評」（夏代表）だという。日本で経験を積んでスキルアップしたいと望む研修生と、老齢化で効率向上や品質維持に悩む工場の双方にメリットがある。
実際、日本の工場で研修を終え帰国した人材の多くは「龍大食品集団のグループ工場でリーダーとなって活躍している」（同）例が多いという。派遣する事業者の『顔』が見える、つまり龍大食品集団という信頼ある企業を介した人材派遣なので、「日本でトラブルが発生しても迅速に対応」できるのも魅力。同社の中国人スタッフが定期的に派遣先企業を訪問し「研修生の悩みや、受け入れ先企業（工場）の要望を聞いている」。