夜間操業で供給責務果たす
三島食品 関東工場(1)

 大震災発生からまもなく1年。計画停電や電力制限令など食品工場の操業の根本を考えさせられる月日だった。三島食品の関東工場は昨年夏、空調機や冷蔵庫・冷凍庫の稼働時間を最大限に抑える道を選んだ。10年前に導入していたデマンド計(電力自動制御装置)が活躍。これに加えて、各スタッフの「意志」が工場を動かした。

関東工場の外観

 地震発生後、最初の操業日となる3月14日の月曜日。計画停電がその週から始まるという報を受けた小彼徹工場長は、関東工場が取るべき選択を工場の全スタッフに伝えなければならなかった。
 停電により稼働時間が遮断してしまっては、計画通りに納得のいく生産はできない。連続して生産ラインを稼働させたいと考えた小彼工場長は夜間操業を想定する。
 現場の全スタッフにその考えを投げかける。返ってきた言葉は全員「やりましょう」。
 「その言葉は嬉しかったですね。大半が女性です。家庭のこともあったことでしょう。夜間操業なんて工場の立ち上げ以来、初めてのことだったのに。当然、反対意見も挙がると思っていたのですが、“やる”と言ってくれたのです」と小彼工場長は目を輝かせる。

女性スタッフが多く活躍している

 生産ラインは65名。品質管理や資材部門を併せて80名近くいる同工場は女性社員が多い。しかも、そのほとんどは主婦。「営業部門もがんばっている。生産部門が迷惑をかけるわけにはいかない」。一丸となった関東工場は翌火曜日から夜間操業に踏み切った。何の不満や不安の声が挙がらずにスムーズに移行できたのは、日頃のコミュニケーションの成果と考えられる。
 しかし、どうしても夜間に出勤できないスタッフも当然いる。そうしたスタッフには主力のレトルト食品の原料となるコーンやしらすの選別作業など、昼間に電気がなくてもできる仕事に就いてもらった。昼間動いている営業部門との連絡係も必要となる。

 同社のもう一つの生産拠点である広島工場に単純に生産を移管できない理由もあった。関東工場はレトルト食品のほか、ふりかけも一部生産している。ふりかけの本格的な生産は広島工場の担当だが、「関東工場はアレルゲン原料に関わるふりかけを生産。コンタミをなくすためにも、むやみに移管はできない」という。 (次号に続く)