【年頭所感】
共創による持続可能な社会の構築へ
設立30周年を迎えて
日本ロジスティクスシステム協会 遠藤信博会長

    遠藤会長

 新型コロナ禍によってビジネス環境は大きく変化し、世界中のサプライチェーンが混乱に陥り、今なお続いている。企業活動の礎である物流、ロジスティクス、サプライチェーンを戦略的に位置づけ 、変化に対して俊敏、柔軟に対応することが今まで以上に重要になる。

 2021年は2050年に向けてのカーボンニュートラルが示された年でもあり、物流・ロジスティクス分野でも、データの共有やDXの活用を積極的に進め、輸送機関の積載率の改善やCO2排出量の削減等に取り組むことが急務である。

 このように、経営環境は先行き不透明であり劇的に変化することが予想される。加えて、従来から続く生産性向上や標準化、デジタル化の課題に対して個社で取り組むことの限界はより明瞭になりつつある 。ロジスティクスを産業界をあげて推進するとともに、社会課題の解決といったより高次の目標を達成するためには、サプライチェーンで繋がる企業間で連携、共創するべきであると考える。

 2022年6月、当協会は設立30周年を迎える。産業界の発展やSDGsの目標達成に貢献するために作成した「ロジスティクスコンセプト2030」における7つの提言の実現に向けて、「総合物流施策大綱」の方向性と合わせながら次の主要事業5つを展開する。常に全体最適を志向するロジスティクスの視座から企業並びに社会的課題の解決に努める 。

 1)持続可能な社会の実現に貢献するロジスティクス
 SDGsを中心テーマとし、持続可能な社会の実現に貢献する物流・ロジスティクスのあり方について、産官学と連携を図りながら、引き続きワーキンググループで調査・研究を進める。あわせて、物流・ロジスティクス分野でSDGsに取り組む企業を増やすために、手引書の作成・配布や講演会等の普及・啓発活動に取り組む。

 2)サプライチェーンマネジメントの進展
 経営層の理解、企業間・部門間連携、人材育成、標準化、グローバルサプライチェーン、SCMの再構築等のサプライチェーンマネジメントに関する課題について、推進部会で検討を進め、提言およびブックレットの作成・配布、講演会等を通じた課題解決や普及・啓発活動に取り組む。また、サプライチーンマネジメント関連セミナーを拡充する。

 3)ロジスティクスイノベーション推進
 持続可能な物流・ロジスティクスを実現するために、 全体最適を志向し、ヒトの生産性向上、モノの有効活用、環境負荷低減をKGI(重要目標達成指標)に掲げたDXの実装に向けて、企業連携で共創しながら検討を行う「オープンイノベーションラボ」の活動を拡充する。また、物流・ロジスティクス関係者が一堂に会し、情報発信とビジネス交流・技術交流が行われるアジア最大級の展示会「国際物流総合展2022」を、2022年9月に東京ビッグサイトで開催する 。

 4)人的資源管理(HRM)高度化
 複雑・多様化する物流・ロジスティクス分野の課題に対応し得る人材の確保や育成に向け組織したHRM推進研究会の活動を拡充、深化し、育成方法や人事評価制度の整備等の課題解決を支援する。あわせて、階層別、分野別の各種講座やセミナーを、集合型、オンライン型、それぞれの長所を活かした型式で開催する。また、 学生に対して、物流・ロジスティクスの重要性や仕事の面白さに関する理解を促進する活動に取り組むことにより、物流・ロジスティクス分野の人材拡充に貢献する。

 5)物流現場改善の推進
 経営環境が変化する中で企業価値を高めるためには、 広い視野で物流現場を捉え、物流現場が自発的に率先して考え改善する現場力の強化が欠かせない。当協会では、引き続き、物流現場改善事例発表会や改善手引書の配布等の普及・啓発活動を行う 。また、新たに物流現場改善活動に積極的、継続的に取り組み、成果を上げる企業を、物流現場改善の先進企業として認定する制度を実施する。