4月に社長になった。営業担当の頃からセミナーやホームページを新規のユーザーを掴むツールへと改善した。機械の販売だけでなく、プロセスセンターを建設、運営するスーパーマーケットを支援するという“ヒライ”のスタイルもこの頃から拍車がかかった。
平井社長
――4月に社長になった。これまでの経歴は。
平井 当社に入社する前は、情報系の営業、中堅総合商社の経営企画部にいました。入社後は機械の営業を5年半。その後管理部門に3年いました。営業部時代は営業活動だけでなく、当社で手薄な部分の改善も進めました。
――手薄と感じたところとは?
平井 セミナーを以前から開催していましたが、当時は既存のお客様に向けたプライベート的な内容がほとんどでした。それはそれでお客様から評価を得ていたのですが、それだけでは新規のお客様が増えません。そこで広くオープンにし、DMを送るなどして、まだ接点が少ないお客様にも呼びかけました。セミナー内容も新規顧客が参加しやすいように、それまで中心だった機械のオペレーションだけでなく、生鮮プロセスセンター(PC)の運営ノウハウなども盛り込みました。
――PC向けの提案は特に力を入れている。
平井 その甲斐あってか、ここ数年のセミナーは想定数以上の方に参加いただいています。その2〜3割は新規の方たちです。
セミナーをオープン化したほか、ホームページも手を加えました。以前は会社案内的なもので、訴えるものが明確ではありませんでした。しかしHPも営業ツールになりますので、食肉スライサーの製品紹介や、PC関連の情報を充実させました。
――HPの効果は。
平井 HPを見て、既存のお客様から“ヒライさんはプロセスセンター事業もやっているの?”と驚かれることもあります。機械の販売やメンテナンスのみでお付き合いしていた方でも、いざご自身が食品工場やPCを作ろうかとしたときに、今まで当社のことが思い浮かばなかったのが、HPを通じて改めてお付き合いするケースもあります。
――力点を置いているPCについて。
平井 ここ数年はスーパーマーケットのインストア向けのスライサーではなく、PCの食肉スライサーを中心に提案しています。特にうす切りや小間切れ、切り落としに対応したものが売れ筋です。
――ユーザーのセンター新設状況は。
平井 センターによってトータルの人件費やコストを削減したいというスーパーが増えています。大手のスーパーは多店舗展開を進めるために、その後方支援となる拠点を充実させようと全国各地で相次ぎセンターを新設しています。地方の地場スーパーでも生鮮加工のセンター化に注目しています。“製造小売業”と呼ばれるように、スーパー自身が製造に携わり、他社と差別化した商品や付加価値のある商品を作って集客を目指しています。
センター向けの食肉スライサーで貢献したのが、日本キャリア工業が開発した「AtoZ」「AtoX」シリーズです。この普及が、食肉のスライス加工を省人化でき、熟練技術が要らない点がメリットとなりました。原料もこの装置に合った規格であることが必要となるのですが、スーパー側もセンターに適した規格の商品を揃えたことが“結果”となって表れました。
一昔前はセンター向けの加工機械が開発されていなかったため、インストアで使う丸刃の小型スライサーを何10台もセンターに集め、スタッフも何10人と配置し、長時間稼働させていました。センターを建てても、店のバックヤードと同じことをやっていたため、生産性が上がるわけではなく、設備費や配送費をかけた分だけコスト増となってしまい、センター運営は厳しかったのです。
――センター化の動きにどう対応する?
平井 センター化することで生鮮部門を集約し、大量加工できれば、トータルコストを抑えることができます。そこでパートタイマーの比率を上げ、正社員はもう少し付加価値の高い仕事に従事すればいいわけです。肉を切るだけのオペレーションに人件費を割くわけにはいきません。そこをカバーできるのがパートタイマーでも充分に扱える「AtoZ」、「AtoX」です。シリーズが用途別にだいぶ開発されてきたので、一連の機械をセンターで揃えていただければ、スーパーで提供するのに充分なスライスアイテムができます。
また、センターを作ってしまえば、今まで挽肉のみに加工していたものがハンバーグも作ってみよう、ギョウザも作ってみよう、コロッケもチキンカツも作ってみようかと様々なものに挑戦できます。外注していたものが、自分たちで内製化できるようになり、他店との差別化を図ることができます。
――センター化には成長に向けた可能性が多く秘められている。
平井 センターを作ったからといって、それで終わりなのではなく、店舗との連携を図らなければなりません。人材が育たなければいけません。それは当社も同じです。機械を売って、それで終わりというわけではありません。スーパーが消費者の反応を割り出し、それを参考にしてよりおいしい食品を提供するように、当社もユーザーが機械を有効に活用し、利益を出していただくよう働きかけていかなければなりません。ユーザーに喜んでもらうという責任があります。
高性能な機械がいいのではなく、お客様に喜んで使っていただけるのがいい機械なのだと私は信じています。
私たちは全国のスーパーの加工場を見てきています。そこで経験した成功事例や改善すべき点などを積み重ねており、ノウハウやレイアウト提案として次の現場で活かせます。センター建設にせよ、機械の購入にせよ、ユーザーはそれだけの投資をしているので、必ず成功させなければいけません。“ヒライ”に相談してみよう、“ヒライ”なら安心して任せられるよ――と言っていただけるような、常にお客様に聞かれるような会社でありたいですね。