大豆ミート製造機、今年夏を目途に完成
商品開発の研究を加速、
「ツナ」など代替肉以外にも挑戦
冷熱エンジニアリング会社の菱熱工業（東京都大田区、近藤貢社長）は代替肉市場の拡大を見据えて大豆ミート(植物性たんぱく質)専用の製造機「大豆ミートプロセッサー」の開発を進めている。今年夏ごろまでに試作機を完成させ、食品メーカーやベンダーに向けて提案を開始する。大豆ミートを内製化することで味や食感を創作し、オリジナル商品を開発できるほか、製造コストを大幅に抑えられるなど、機械の導入効果を訴求する。
現在、大豆ミートの製造には２軸エクストルーダー（押出機）が使われている。プラスチックペレットの製造をはじめ食品分野（菓子）に活用できるなど汎用性が高いため大型で価格も高い。初期投資の負担が大きいことから内製化に踏み切れない企業は少なくない。
そこで同社は大豆ミートの製造に特化した機械を開発する。プラントドメイン担当の近藤勢氏によれば「既存の２軸エクストルーダーで大豆ミートを製造する場合、動力は２〜３割しか使っていない」という。大きな動力は不要として、モーターを小型化したり、スクリュー（軸）を短くするなどしてコンパクト化を図る。価格は既存の２軸エクストルーダーの半額程度をめざす。
中小メーカーの導入ハードルを下げる
標準機の生産能力は１時間あたり25�圓世�、顧客のニーズに合わせて５�圓僕泙┐燭蝓�300�圓泙嚢發瓩燭蠅垢襪海箸發任�る。
近藤氏は「たんぱく質危機や家畜が排出するメタンガスによる地球環境への影響などを背景に国内外で代替肉市場は急激に伸びている。当社は大豆ミートの研究を昨年スタートし、知識を蓄えている。顧客の要望に対して商品情報や製造ノウハウを提案できる体制づくりを進めている」と語る。
弁当や惣菜など中小の食品メーカーでも導入しやすい価格帯を早期に実現し、国内の普及を急ぐ。
同社の試算では、内製化による大豆ミートの原価は、仕入れ価格に比べて50%程度抑えられるとみる(人件費や加工費、償却費を除く)。
冷熱ドメインの山口浩幸食品機器リーダーは「仕入れ原料（大豆ミート）はコスト増だけでなく、仕様が決まっているため、自分たちで食感や大きさを変えられない。市販品の中で商品を作るしかない。機械の導入ハードルを下げれば、自分たちで商品開発に取り組み、他社と差別化を図ることができる」と導入効果を強調する。
今年夏に完成を予定している「大豆ミートプロセッサー」、中小食品メーカーでも導入しやすいよう低価格を実現する
大豆ミートは「脱脂大豆粉」を原料に製造する。大豆粉をフィーダーから投入し、水を加える。機械は２本のスクリューが大豆粉と水を混錬しながら熱を加えて前方に押し出す仕組み。この時に圧力も加える。
混ぜ合わせたものは吐出部から外に出た瞬間、圧力が解放されるため一気に膨らむ。圧力、熱を加えている時に大豆粉のたんぱく質は繊維化され、圧力が解放されることで繊維質が膨み、肉のような食感を作り出す。これが大豆ミート（粒状大豆たん白））になる。
大豆ミートに味付けしたり、ほかの原料を加えたりして加工することでハンバーグやから揚げ、ソーセージなどに仕上がる。
吐出部のパーツも変えられ、大豆ミートを丸い形状や板状にすることが可能。板状からはビーフジャーキーに加工することもできる。
「現在はミルフィーユ状にしてステーキが作れないか研究を進めている。原料は大豆のほかに落花生やそら豆、えんどう豆などがあり、工夫次第で様々な商品開発の可能性が広がる」（プラントドメイン担当の近藤氏）。
植物由来原料で新カテゴリーの商品を
大豆ミートを使った商品開発は肉にとどまらない。意外なところでは「ツナ」の試作に着手しているという。ツナ缶の価格は安定しているが、この先漁獲量が減って原料価格が上がるリスクもある。健康的で安定供給が可能な代替商品として期待が高まる。
冷熱ドメインの山口氏は「安定供給という点で植物原料は最も安定しており、代替商品はさらに増えるだろう」とみる。そのうえで「肉にこだわる必要はない。フィッシュフライの可能性だってある。プラントベースで健康的な食品を作るという発想で新しいカテゴリーを創出したい」と語る。
商品開発やマッチングもサポート
菱熱工業は新製品の「大豆ミートプロセッサー」を起点に大豆ミートの研究から商品化、販路拡大までをサポートする。
大豆ミートについて研究したいという企業には機械の販売と据え付けのほか、操作方法をレクチャーする。運転条件のパラメーター設定は様々あり、機械を順調に稼働させるまでに時間を要する。このため、開発予定の商品に合わせた食感（弾力）や味わいに最適な原料配合、加水量を調整して商品開発を後押しする。
大豆ミートの研究は終わっており、工場内に新規にラインを構築したいという企業には、「大豆ミートプロセッサー」のほかにミキサーや成型機などの周辺設備を選定して提案する。近藤氏は「機器の据え付けや増改築は当社の本業であり、ワンストップで対応できる」と語る。
大豆ミートの製造体験会に40社集う
昨年11月に既存の機械を使って大豆ミートの製造体験会を開催したところ、コンビニベンダーや食肉加工メーカー、食品分野以外のベンチャー企業など約40社が集まった。
参加企業の中には大豆ミートの製造を検討したいという企業もあれば、大豆ミートを仕入れて加工し、商品化したいという企業もあった。そこで同社が間に立ってマッチングし、販路拡大をサポートすることも計画している。すでに進行中の案件があるという。
試作機が完成した際にはグループ会社のラボ施設に実機を置いて、調理テストや共同開発の研究に使ってもらうことを想定している。近藤氏は「正式発売は年内を予定している。市場開拓はここ１〜２年が勝負どころとみており、スピード感が重要。積極的に提案していきたい」と力を込める。